「キリンラガー」「一番搾り」 に続く3番目の定番商品としてキリンが17年ぶりに投入した 「キリン・ザ・ゴールド」(以下、「ゴールド」)。 「ゴールド」は、今年(07年)3月の発売当初こそ順調でしたが、 その後の売上の伸びは鈍く、8月に年間販売目標を800万ケース から600万ケースへと下方修正。
現在もそこそこコンスタントに売れてはいるようですが、
関係者が期待したほどの売れ行きとはなっていません。
しかし、ゴールドの特性を考えると、
例えば、アサヒのスーパードライを打倒できるような
一般大衆向けの商品ではありません。
つまり、期待が過剰だったというのが現実でしょう。
ゴールドの特徴を簡単に挙げると次の3点です。
・苦味の少ないまろやかな味わい
・アルコール度数低め(4.5%)
・高級感と洗練さを感じさせる落ち着いたデザイン
こうした特徴に魅力を感じるのは、
ビールより焼酎系、カクテル系に流れがちな若年層
(特に女性)ですよね。
つまり、ビールをガブガブ飲む私のようなヘビーユーザー
ではなく、ライトユーザーが中心顧客層になる。
当然ながら、販売数量的には、
それほど大きく伸びるはずもない。
ですから、ゴールドの場合、
販売数量の極大化を狙うのではなく、従来のビールでは
苦味が強すぎたり、アルコール度数が高くて1缶(350ml)は
飲みきれないといった理由でビールを敬遠していた層を
がっちり掴むことのできる定番ビールとして育てられるべき
じゃないでしょうか。
さて、以上のようなことを考えるために役立つ、
ゴールドに対する消費者の生の声を教えてくれたのが、
先日発売されたばかりのこの本です。
『なぜ、キリン・ザ・ゴールドは求められるのか』
(喜山荘一編著、ドゥ・ハウス)
→アマゾンはこちら
同書では、ゴールドを飲用している消費者300人を対象とした
自由記述主体のアンケート調査によって、ゴールドに対する
「生の声」
が豊富に掲載されています。
こうした生の声を元に、
ヒット商品の「なぜ」
(なぜ売れているのか、求められるのか)
を読み解くのが、編著者の喜山氏の言う
「なぜ解き」。
興味のある方は、
ぜひこの本を読んでみてもらいたいのですが、
アンケートに回答した消費者は、
ゴールドの特徴やベネフィットをきっちり
理解・把握できているんですよね。
本来のターゲットに該当するユーザーには、
「ゴールド」がなぜ高く評価されるのか?
がよくわかります。
私も、ゴールドを久しぶりに飲んでみて、
確かにバランスの取れた本格派ビールだということ
を再認識しました。ただし、やはり物足りないので
常飲はしませんが。
やはり現状では、
ゴールドのターゲットイメージが拡散気味で、
「誰のためのビールか?」
が不明確になっているのが問題だと思いました。
この点を改善すれば、商品力は高いだけに、
定番ビールの一角を占めるブランドとして安定軌道に
乗れるんじゃないでしょうか?
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2009.03.05
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。