「もしアンドロイドが車を作ったら」のアンドロイドはGoogle社の開発しているOSの”Android”ではありません。アンドロイド・インダストリーズという自動車生産会社のことです。アンドロイド・インダストリーズ社(以下アンドロイド)は自社ブランドを持たず、GM、クライスラーなどの米自動車大手3社を顧客に持ち生産を委託されている企業です。言い換えると自動車版EMSでしょう。
前回は、日本の電子産業が衰退したのは世界的な水平分業モデルからの遅れがその原因の一つであると、元日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が分析していることを取り上げました。
私はこの状況を「日本企業が個別企業の枠内で国内企業同士のシェアなどの近視眼的な競争に夢中になっていて、海外メーカーは「あそこは品質が悪いから問題外。」などと高をくくっているうちに新しいルールやビジネスの仕組みが作られてしまい、その新しいルールでやられてしまう、よくあるパターン」だと述べています。
同じ様な動きが自動車業界でも出てきているようです。
「もしアンドロイドが車を作ったら」のアンドロイドはGoogle社の開発しているOSの”Android”ではありません。アンドロイド・インダストリーズという自動車生産会社のことです。アンドロイド・インダストリーズ社(以下アンドロイド)は自社ブランドを持たず、GM、クライスラーなどの米自動車大手3社を顧客に持ち生産を委託されている企業です。言い換えると自動車版EMSでしょう。
8月5日付けの日経新聞に同社の記事が掲載されています。それによるとアンドロイドは車のなんでも工場であり、「どのメーカーのどの車、どの部分でも同じやり方で作っているのだ」そうです。そのため生産ラインでは、ラインを流れる台車の台の部分を工夫することで混流生産を可能にしている。また従業員も2時間半毎に担当を変えることで、多能工スキルを身に付けさせているとのことです。
その生産性の高さから、米ビッグ3が生産の外部委託を増やしたこともあり、アンドロイドはこの5年で工場数が12から20に拡大するほど、業績も好調に推移しています。現在は米国内での生産が主流であるものの、日本向け自動車メーカーへの売込みも積極的に推進しているようで、近い将来にアジア地域で工場を持つことになるとのことです。
アンドロイドは2013年で約10億ドルの売上をあげており受託生産会社としては米国最大手になります。また現在は三井物産が筆頭株主になっているようです。
従来自動車産業は摺合せ型の典型例であり、標準化やモジュール化は(会社によって多少異なりますが)当初考えていたようには進んでいません。そのため、多数の部品を設計段階から作り込み、自社工場でじっくり摺合せながら仕上げていく工程が日本型「ものづくり」に適合していると考えられています。最近は複数の自動車メーカーで部品の標準化や統合化が進み始めましたがそれも一部の品目だけです。
そういう意味では生産の外注化や水平分業などの動きは、現在は米国を中心とした取組みであることは確かなこと。しかし、2つの要素が生産の外注化・水平分業の進化につながると言えます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。