現場には、経験知に裏付けられた価値ある工夫やノウハウがたくさんあります。しかしそれらは、頭の中や引き出しの中にしまわれていて、組織的に活用できていないことがほとんど。これではあまりにもったいないですね。そこで、サービス向上やCS向上を組織的に進めるために「プロセスのモデル化」をご紹介します。
これまでの記事で、目に見えないサービスやCS向上、営業活動を少しロジカルに捉えるだけで、今までよりはるかに具体的で効果的な努力のポイントが見出せそうだと、ご理解頂けたと思います。たとえば「サービス品質」の記事では、サービス品質を要素に分解すると具体的にどんな努力をすることに価値があるのかが浮かび上がってきました。また、サービスの原点である、「サービスや顧客満足の定義」の記事では、それを理解することで、今までの取り組みの盲点が見えてきました。そこで今回は、サービスサイエンスにおける「プロセスのモデル化」を取り上げてみたいと思います。
サービスのとても重要な特徴は「お客様と一緒に作る」ということです。しかし、まだまだ日本のサービスは、「良いサービスは喜ばれるに決まってる」と決めつけて、勝手に作ったサービスを一方的に押しつけてしまっているのが現状です。勝手に作ったサービスには、「余計なお世話」や「無意味行為」、「迷惑行為」のような要素がかなりの割合で入ってしまいます。これではお客様に満足していただくことはできません。これからは、お客様と一緒にサービスを作り上げていかなければなりらないのです。しかし、「お客様と一緒にサービスを作りましょう」と言われても、具体的に明日から何をしたら良いのか、いまいちピンときません。
そこでサービスサイエンスでは、サービスプロセスを「モデル化」することで、お客様とのサービス共創を実現しています。実はこのプロセスのモデル化をすることで、個人や現場に溜まっている経験知やノウハウ、工夫が見える形になり、組織で活用できるようになるのです。個人や現場の気づきや努力を、組織の力に変えられると、組織的なサービス改革やCS向上は、一段と効果的に進められるようになると思います。
さて、それではプロセスのモデル化の進め方を見ていきたいと思います。具体的には図のような形で、サービスプロセスに沿って、お客様ごとに異なる「事前期待」と、それに応えるための「サービス品質」を対応させていくことで、高い顧客満足を得られるサービスを設計するというものです。今回は基本的な部分のみのご紹介に留めたいと思いますが、ポイントは次の3つになります。
●まず始めに、サービスプロセスを分解して定義します。この際には「サービスはお客様と一緒に作る」という意識で、サービス提供プロセスと顧客プロセスを一緒に定義することがポイントです。多くの企業では、サービス提供プロセスは定義されていますが、顧客プロセスが定義できていないことが多いようです。そこで、顧客プロセスを定義してみると、実に様々なことが見えてきます。例えばトラブル対応のプロセスでは、サービス提供スタッフは原因究明や対応作業に没頭しています。一方、お客様はというと、状況を何も知らされずに待たされてイライラしている。このようにお客様への配慮が足らないことが原因でクレームになってしまうことはよくあります。こういったことが、顧客プロセスを定義することで浮かび上がってくるのです。顧客プロセスに、「何も知らされずに待たされる」と書かれていれば、誰でもすぐに「こまめな中間報告」などの工夫が必要だと気付けるのです。
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2015.07.10
2009.02.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新