今までの日本では「自動化、機械化することが合理的である」という真理が大きな疑問なく受け入れられてきました。しかしそれを変えていかなけれなならない状況になってきているのです。
先日興味深い記事を読みました。http://diamond.jp/articles/print/19218
「改札を機械化する日本、改札をなくす韓国-情報化の本質とは何か」という記事です。
韓国の新幹線にあたるKTX(韓国高速鉄道)には改札がないとのこと。改札がなくても車掌は手元のハンディターミナルを見ればどの席が空席かわかり、もし予約やチケットなしで乗車したとしても電車の中でチェックできるから、というのがその理由です。またもし不正乗車があったとしても駅と駅の区間が長いので取り締まることはできるし、その為に高額な改札装置を設置するよりもコスト的にもメリットがある、ということです。確かに日本でもスカイライナーや新幹線などの一部の電車予約で、予約方法などの制約はあるものの車内改札をしていない電車もあります。しかしそもそも改札をなくしてしまうという発想は日本ではなかなか出てこないでしょう。
昭和の世代から考えてみると日本の社会や生活の現場では人を減らすことが、その大きな変化の一つということに気が付かせられます。以前は駅の改札には必ず多くの駅員さんがいました。ファミリーレストランは、今も人は居ますが昔に比べるとお店の面積当たりの店員さんの人数はかなり少なくなっているでしょう。ゴルフをやるにしても以前はキャディさんが必ず付きましたが今ではゴルフカートが自動走行し、またGPSナビがカートにつけてあるのでキャディさんが居ないゴルフ場も増えています。企業に訪問して気が付くのは受付の人がおらず端末が置いてあるだけという企業が増えていることです。工場や倉庫などでも自動化・機械化は間違いなく進展しています。
このように日本では経済発展とともに人件費が高騰し「自動化、機械化することが合理的である」という真理が大きな疑問なく受け入れられてきたと言えるでしょう。これはIT(情報技術)についても同様です。ERPを導入するには莫大な投資がかかるにも関わらず業務の標準化、自動化、を進めることで人件費を削減できれば莫大な投資を賄うことができる、というのが疑いのない真理でした。
そのような真理に対して冒頭に取り上げたKTXの事例はとても興味深いものです。
自動改札を導入することで単に改札に必要な人員を削減するだけでなく、情報技術を活用することでその改札すら不要にするという発想は「自動化、機械化することが合理的である」という真理からは出てこないからです。ここでは改札を設置しないリスクやロス、手間と(自動)改札を設置することの費用を比べ合理性のある選択をしていると言えます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。