2025年問題に向けたIT企業の新規事業企画案を事例にコンサルタントの課題設定を解説してみた。
「解決できない課題はない。」これはコンサルタントとして体得した課題解決の極意である。ただし、課題をちゃんと設定すれば、という条件が付く。雑多な問題の中から、何を課題とするかということが最も重要で、課題が適切に設定されていれば、必ず解決できる。すぐには解決できなくても、簡単には解決できなくても、必ず解決できる。適切な課題であれば、そこに至るすべてが狙い通りにならなくても、解決できるからだ。課題をちゃんと設定することができない人が、思いの他多いので、コンサルタントの存在価値があるのかもしれない。
課題解決の基本は、(1)問題を分解し構造化することで本質的な課題を導き出す。(2)その本質的な課題を解決する。という2段階で成り立っている。このことは、逆に言えば、問題をただただ並べてみても、何も見えてこないし、個々の問題それぞれに解決策をつけても何も解決しない、と言うことを意味する。また、課題を設定する際、忘れてはいけないのは、事象や問題と課題は違うということだ。一番多い間違いが「できていないこと」をそのまま課題とすることで、これをやってしまうと解決策を思い付かないし、思い付いても解決できない。課題は「やるべきこと」であって「できていないこと」ではない。抽象的だとわかりにくいので事例で考えてみよう。
昨年(2014年)末、あるIT企業の新規事業開発に向けたアイディアシートをもらった。2025年問題*1を前に「高齢者対策」をテーマとした新規事業・新規商材を考えているとのことであった。一次評価をしてみないか、ということで渡されたそれには60くらいのアイディアが書き連ねてあった。高齢者の健康増進支援、生活支援、生きがい支援等々。数だけはある。そして見事に「並べた問題の一つ一つの解決策」になっていた。ジャストアイディアだと念を押されたから、第三者に評価させるのが時期尚早だっただけかもしれない。それにしても「高齢者対策」という大きなテーマに対して本質的な課題を理解する努力をせず、思いつくままに並べているだけに見えた。
高齢者は服薬を忘れる、自己管理ができない、外出ができない、ネットをうまく使いこなせない、生きがいが見つけられない、という調子で問題が並んでいる。こんな問題を個別解決(できるとして)しても仕方あるまい。この、たくさんの"できない"の中から、何が本当の課題なのかを見定めなければ解決策としてのITソリューションなど役に立たない。
いや、もともとこの新規事業は単なる「商材」であって、高齢者問題を解決しようとしてはいないという言い訳すら聞こえてきそうだ。しかし、問題を解決しないソリューションが売れるとも思えない。大体、アイディアの9割がサービス提供事業者や自治体などの他者を介して、という前提であるところに思考停止の匂いを感じる。高齢者は困っているから、自らお金を払って、支援サービスを受けるだろう。支援サービスを提供する事業者は、ITソリューションが必要だろうから、利用料を払ってくれるだろう。基本形がこれである。あまりにも、虫が良すぎる。
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