今度は偽Apple Watch。明らかなニセモノでも売っていれば買う?騙されるだけではないからやっかいなニセモノ市場のうす暗がり。
2015年3月13日、Apple Watchの製品発表の翌日に、中国で大量の偽Apple Watchが出回っているというニュースが流れた。なんと発売前。本物より前に売るとは、すごいニセモノ(模倣品)もあったものだ。OSにAndroid搭載とかなり強引だが、意外に高性能な機能を保有しているらしい。いやはや、中国人は仕事が早い。初期モデルはそれなりに雑なつくりだが、いずれは専門家でないと見分けられなくなるだろうという。正規品のメーカーも大変である。
それにしても、これを買うのはいったいどういう人=市場なのだろう。純粋にApple Watchのような機能の製品が欲しいけど、高くて買えない人だろうか。中国では「贅沢税」がかかり、ただでさえ高価な製品はさらに高額になるらしいので、それもありそうな話ではある。あるいは、いち早く新製品を手に入れたと、自慢したい人だろうか。なんとなく、話題になっている製品だから、手に入れておきたいという野次馬的な人だろうか。そこには、単純には割り切れない需要と供給の関係がある。
以前、シンガポールに行ったとき「ニセモノ、トケイ、ホシイカ?」と道端で何度も声をかけられて笑ったことがある。偽ブランドの腕時計というのは「ロレックス、ヤスイヨ」などと言って売っているのかと思ったら、違うのだ。最初からニセモノを買わないかというセールスをしている。この人たちはその場にいる私たちを騙そうとはしていない。私たちに、見栄で他人を騙したいでしょう?と言っている。いわば悪魔のささやきだ。ニセモノ市場はそういう人間の心の暗がりに支えられて成り立っている面がある。
折よく、国立歴史民俗博物館で「大ニセモノ博覧会」という企画展をやっていたので、見に行ってきた。(2015年3月10日から5月6日まで開催)
縄文時代のイミテーションの腕輪や輸出された人魚のミイラから、時の権力者の偽造印を押した偽文書、偽酒、偽金貨まで、バラエティにあふれるニセモノ文化の展示である。接待で見栄を張るために宴会場に飾られる偽掛け軸や供される偽ブランドの食器。もとは売買目的の模倣品でありながら、徐々に洗練され芸術的・文化的な付加価値を生み出してしまうに至る陶器。目の当たりにすると『「ニセモノ」と「ホンモノ」は非常に微妙な関係にあり、「明と暗」「黒と白」といった単純なわけ方ができない場合もたくさんあります。』という解説に大きくうなずくことになる。
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