いくらサービス向上やCS向上に熱心に取り組んでも、サービス提供の価値観次第では、やればやるほどお客様が去っていくということも。そこで今回は、サービス提供の価値観を見つめ直してみたいと思います。
サービスは目に見えないもの。だからこそサービスサイエンスの観点で少しロジカルにサービスの本質を理解してみると、今までよりはるかに価値のある努力のポイントや、取り組みの盲点が見えてきます。(以前の記事:顧客満足向上の盲点シリーズでは、今までの取り組みが少し筋違いだったかもしれないことが明らかになりました。)今回は、サービス提供の価値観を見つめ直してみたいと思います。
サービス業は何が違う?3つの観点で比べてみる
サービスでお客様に喜んでいただくのは、思っているよりも難しいことです。「やってもやっても、成果が出ない」「現場が変わらない」「絵に描いた餅で、精神論から抜け出せない」と悩んでいる企業も少なくありません。その原因は、サービス業は他と何が違うのかを比べてみると、よく分かります。そこで、製造業とサービス業ではどのような違いがあるのか、簡単に3つの視点で比較してみましょう。
製造業では、製造した商品を通してお客様に喜んでいただいています。そのため、製造業でははじめに、「材料」である原料や部品を調達します。そしてそれを生産工程に運んで商品を作り上げます。ここに製造業の大きな特徴のひとつがあります。それは、「生産」にはお客様は直接的に絡んでいないという点です。そして、製品を購入する際には、お客様は販売店に並べられた商品を、見たり、触ったり、スタッフの説明を聞いて、納得して購入していきます。こんな具合ですね。
それでは、同じようにサービス業についても見てみましょう。
まずは「材料」です。
「サービスの材料」っていったい何でしょうか?
いざこう聞かれると、ドキッとしますよね。なかなか答えが出てこないものです。このように、製造業では当たり前なことが、サービス業ではうまく捉えられていないことに気づきます。サービスの材料は「お客様の課題」です。お客様が課題を持ってサービスを受けに来て頂かないと、サービスを提供することができないのです。
続いて「生産」です。サービスは日々、現場で作り出されて提供されています。ここに、サービスの最大の特徴があります。それは、「サービスはお客様と一緒に作るもの」という点です。製造業では「生産」にはお客様は直接的には絡んできませんでしたが、サービスは「お客様と一緒に」作らなければならないのです。
こうしてサービスは提供され、お客様も喜んでお帰りになります。しかし、この後、恐ろしいことが起こります。
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2015.07.10
2009.02.10
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新