サプライヤーの立場からみたコンペのあり方

2015.06.26

経営・マネジメント

サプライヤーの立場からみたコンペのあり方

野町 直弘
調達購買コンサルタント

昨今騒がれている新国立競技場のデザインコンペやデザイン見直しを通じてサプライヤの立場からみたコンペのあり方を語ってみます。

ここのところ、新国立競技場のデザインコンペやデザイン見直しの話が様々なメディアによく出ています。私も詳細はよく知りませんが、要件として当初1300億円という予算が提示されていたはずだったが、最も斬新なデザイン案が採用され、試算では3000億円に工費が膨らんでしまい、デザイン案の見直しを行い約2500億円の規模の総工費が見込まれているという話です。
私がこの話を聞いて最初に感じたのは、デザインコンペで落ちた会社やデザイナーはどう思ってるかなということです。いろいろ事情はあるのでしょうが、コンペを主宰した側にも何らかの説明責任があるということでした。

このようなコンペや相見積り、入札などの一般的に競合と言われる手法は調達購買手法として一般的です。私の立場は競合を主宰する側に対するコンサルティングや支援をする立場ですが、同時にサプライヤの一社として競合に参加することもあり、今回のメルマガでは競合のあり方についてサプライヤーの立場から考察していきます。

コンペや競合はある意味とても公平な機会です。これに対して公平な競争になっていないケースも少なくありません。例えばある一社から見積りを取ったが思ったより高い見積りだったので改めて何社かの(例えば海外も含む)サプライヤーから見積りを取り、そこで得た安価情報を元に交渉を進め最終的には当初見積りをとった本命サプライヤに発注する。(これを当て馬と言いますが)このようなやり方はごくごく一般的です。
最終的に発注がくる本命サプライヤーにしてみれば、「まあよくあることだ」で終わりますが、当て馬にされたサプライヤにとってはちゃんとした説明がなければ、この会社の依頼には真面目に対応しても無駄だなということになります。

例えば実際の現場でも、コンサルティングの提案を求められるときに何らかの紙(例えば提案依頼書のようなもの)が出てくることは多くありません。
ですからコンペとか入札、相見積りのようにしっかりした手順で依頼がくるということはある意味それだけ参入機会が増える訳ですからサプライヤにとってはウエルカムです。(もちろん一者特命が一番ウエルカムであることは間違いありませんけど。)

ただ今回の新競技場のデザインコンペではありませんがコンペとか入札等のしっかりした手順を踏んでいるにも関わらず、何か不透明な意思決定が行われたり、前提条件が大きく変わってしまったりすると余計不透明感が増します。例えば最安値だったにも関わらず発注がこなかった、とか見積りの際の仕様や前提条件が最終的には大幅に変わってしまっていることに失注したサプライヤが気がつくとか。。こういうことがあるとサプライヤは元々どこか本命の企業があってそこの条件交渉のために、もしくは型通りの手順を踏んでいることを見せたいがためにコンペさせられたんだな、とか考えてしまいます。
サプライヤはやはりこういうことがあると、そういう企業に対してやる気のある見積りや提案はその後出さなくなってくでしょう。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

フォロー フォローして野町 直弘の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。