戦略的購買とリワイヤリングという一橋イノベーション研究所の西口教授の話にインスパイアされ、今まさにその転換期であるというお話です。
先日、あるIT企業のパネルディスカッションに参加させていただきました。そのパネルディスカッションにもご登壇されていた一橋大学イノベーションセンターの西口教授の話を間近でお伺いする機会があり、たいへん興味深い話だったので私なりの理解も含めシェアさせていただきます。
西口教授はネットワークや組織論を専門とした社会学者で様々な著書を出している先生です。今回西口教授のお話しの中で興味を持ったキーワードは2つあります。
「戦略的購買」と「リワイヤリング」です。
「戦略的購買」は1980年代の日米自動車業界の比較研究を行い1994年に西口教授が使われた言葉とのこと。1980年代米国自動車業界のサプライヤマネジメントは、とにかく激しい「競争」でした。単年度契約で常に複数社購買を行っており、毎年価格優位な取引先を採用することを行っており、結果的に「安かろう悪かろう」の世界に陥ったそうです。
それに対する反省から生まれたのが「戦略的購買」という概念です。「戦略的購買」は「協業的」で「体系」だった仕組みと定義されています。取引先ではなく重要なソース先としてサプライヤを捉え、サプライヤと共存共栄の関係を築いていく。これが「戦略的購買」であり、実はこの発祥はトヨタ自動車等の日本企業の取組みである、とのことでした。
会場でも申し上げましたが、私は正にこれからの日本の調達購買には「戦略的購買」が必要となる、と繰り返し述べています。昨年末にメルマガ(ブログ)でも書きましたが、今後の調達購買をあらわすキーワードは「協働」と「サステナビリティ」です。
2000年位の日本企業の調達購買は一部の先進的企業を除きここで言う「戦略的購買」や80年代米自動車産業のような「競争」さえも行われていませんでした。このころの日本の調達購買は「単なる買いモノ係」のようなもの。社内で指定されたものをどこからか探してきて、買う。価格については見積書をもらい赤鉛筆で査定をして見積りよりも安くなってコスト削減しました、という世界感だったと記憶しております。以降、現在に向けての調達購買改革はどちらかというと「集中化」「競争化」「集約化」といった欧米型の体系化が中心となっていました。
ところが、その世界観が昨近急激に変わりつつあります。如何に優秀なサプライヤを囲い込んでいくか、サプライヤとの関係性を築いていくか、がとても重要な時代になりつつあるのです。大きな理由は2つ上げられます。一つはグローバル化により日本での買う立場が通用しなくなってきていること、それから場合によっては他の新興国に買い負けしてしまうこと。もう一点は国内での人手不足です。
このような理由から(以前から申し上げていますが、、)サプライヤとの「協働」が求められており、西口教授がおっしゃっている「戦略的購買」が求められる時代になってきているのです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。