就職浪人という選択肢の実態

2015.08.18

組織・人材

就職浪人という選択肢の実態

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

8/1の選考解禁と同時に内定をゲットした学生も多々出ている一方、出遅れ・準備不足・調査不足といったさまざまな理由からまだ「無い内定」(未内定)状態の学生も少なからず出ています。特に就活が思うように進まない時、「いっそ就職浪人を・・・・」という考えが頭をよぎるかも知れません。その実態と就職浪人という選択について考えましょう。

・就職浪人
学生からの進路相談では、毎年「第一希望の企業に入れなかったので、就職浪人や留年をして再度チャレンジしたい」というものがあります。自分の人生ですから、犯罪でない限りは好きなように生きて良いと思いますが、キャリアカウンセリングを受けに来た人に考えてほしいのは「キャリアの不可逆性」です。キャリアは時間の流れとともに変化していくものであるため、後で逆戻りができません。「あの時こうすれば良かった」という後悔は、絶対に先に立たないのです。

であれば満足いくよう、思う存分時間をかけて第一希望の企業に入れるまで粘り続ければ良いのでしょうか?キャリアカウンセリングの場では、まず就職浪人を勧めることはありません。それには以下のような巨大なリスクがあり、またそのリスクを背負ってまで賭けるメリットが乏しいからです。


・就職浪人のリスク
その1 「準備不足が原因?」
今年度就活に失敗した人間が、もう1年やったからといって成功するとは思えません。もし今の就活失敗の原因が純粋に時間不足にあり、あと500時間かけられるなら絶対に成功できる見込みがあるとすれば、必ずしもリスクではないかも知れません。しかし就職浪人を希望する人の活動状況を聞いていると、失敗原因は「時間がない」からではなく、戦略ミスであることが圧倒的です。そもそもその志望先(超人気企業を志望していることが多い)が求めるものや、志望先での業務といった基本知識が激しく欠けているとか、ES(エントリーシート)や面接に対する理解や準備が全くできていないといった、「時間」が理由ではない場合、たとえ浪人や留年をしたところで、その戦略性や思考、資質が劇的に改善できる保証は何もありません。ゆえに、単に就活がより不利になるよう働くことはあっても、プラスは思い付きません。

その2 「強烈なプレッシャー」
今年はここ10年来最高の売り手市場で、学生側有利に就活は進んでいます。来年も今のところは今年並みの売り手市場は続くという説は多く、筆者も同意ですがそれでも景気はどうなるか全く不明です。欧州、中国の経済危機や原油価格、天災など、何がきっかけで採用動向が変わるかは全く予想はつきません。しかし一つだけ確実なのは「現在より1歳年を取る」ことです。21歳22歳が単に1つ歳を重ねるだけなら、日常生活においては何ら影響はないといえます。しかし新卒一括採用に見られる日本の就活において、就職での「浪人」や「留年」は圧倒的に少数派です。就活2年目の来年ともなれば、そのプレッシャーは今年の比ではありません。就職不可能という意味ではなく、それを跳ね返した人も何人も知っていますが、とてつもないハンデであることは理解する必要があります。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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