日本的なるものへの回帰が起こっている。これは購買の世界でも同じだ。それでは良い購買部を作るのに必要な2つのこととはなんだろうか?
今年の2月頃だったかと記憶していますが、日経ビジネス誌が「善い会社」のランキングを発表していました。会社を単なる「営利組織」としてではなく、働き手、顧客、取引先、地域社会、投資家などの多様な利害関係者、つまり社会への貢献が求められる、と定義し、利益の向上と社会への貢献の一体化を評価しトップ100社を公表したものです。
このように近年は利益と共に社会への貢献が善い会社の条件となっていることは当然の流れになってきました。
デフタ・パートナーズのグループ会長であるベンチャーキャピタリストの原丈人氏も「会社は株主のものである」という考え方は間違っており、高度経済成長期の日本企業のような「公益資本主義」的な会社が「善い会社」であると提唱しています。
原さんが提唱する「公益資本主義」とは株主だけでなく従業員、顧客、取引先、地域社会、さらには地球全体のことを社会の構成要素として、社会全体に広く利益を還元する社会のことです。
また、かつての日本には公益資本主義的な発想を持つ経営者が数多く存在し、今でも日本には公益資本主義の土壌があると考えています。
原さんは日本企業は従来の欧米の「株主資本主義」から脱却し「公益資本主義」のお手本となり世界に発信していくべきだとおっしゃっているのです。
以前のメルマガでも触れましたが私もこのような日本型なるものに対する回帰が起こりつつあり、購買の世界でもそれが顕著にでてきていることを繰り返し述べています。
例えば行き過ぎたサプライヤ集約、競争の強化等は一部の企業や商材では限界がきており、サプライヤとの関係性づくりやサプライヤとの協働作業が望まれつつあること。
これは歴史的には正に日本企業が得意な手法と言えます。またサスティナビリティ重視(持続可能性)についても同様で、単年度の収益や目先の株価の維持が最重要課題である企業にはこのような中長期的な視点から「持続可能な」サプライチェーン構築などできるわけがありません。
また人材育成や部門改革の柱となる日本的「課長」の存在も、一時期は課長不要論が多かったものの今後見直されていくと考えます。
このように会社全体もしくは購買部にとっても日本型なるものの回帰が望まれている方向なのです。
しかし、回帰といっても10年前、20年前の状況にまた、戻ればよいか、というとそれは違います。10年前、20年前の日本企業における調達購買の状況は産業革命前の状況と言っても過言ではありません。属人的な組織であり交渉術の長けたバイヤーや声の大きなバイヤーが偉いというような状況でした。望まれるのは欧米型の合理主義、標準化、効率化と日本型の中長期的視点を伴った施策を融合させることです。これが今後の調達購買の発展につながるでしょう。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。