「非常識な経営」で注目されている日米2社の企業にはある共通点があった。それは従来の収益、効率、低コスト追求だけでなく、信頼、安心、共感、持続というような精神的なものを求めはじめた新しい企業像かもしれません。
最近「非常識な経営」で注目されている日米企業について今回は取上げます。
一社は米国のEVERLANEという企業です。この企業はサンフランシスコ発のアパレルブランドであり比較的高品質な製品を安価で提供するというコンセプトです。
例えばウールのカーディガンが140ドル、Tシャツは15ドル、Yシャツは55ドルという価格です。ファストファッションよりは少し高いレンジではないでしょうか。Webサイトを覗いてみるとシンプルなデザインで魅力的な商品という感じがします。
この企業のキャッチフレーズは「徹底的な透明性(Radical Transparency)」です。
彼らのWebサイトには透明性についてのメッセージが掲げられています。一つ目は「Know your Factory」です。EVERLANEのサイトには世界中で同社の製品の製造を行っている企業の情報が出ています。そればかりか、工場の様子や工場で働いている人々の写真が見られるようになっています。彼らはこういう手法が工場のインテグリティにも有効であると言っています。どこで何を作っているかというリストだけでなく、工場やそこで働く人達の写真が見えることは顧客の安心にもつながるでしょう。
なかには工場で働く人達がEVERLANEのタグが付いている製品を持っている写真などがあり、中国の工場の工員一人一人がブランドに誇りを持ち、手抜きなく製品を作っているのだな、と感じられます。
2つ目は「Know your cost」です。これは各製品について生地材料費、その他材料費、縫製費用、税金、運賃などのコスト構造が明記されてるのです。例えばカシミアセーターについては生地費40.07ドル、その他材料費0.60ドル、縫製費13.53ドル、税金2.17ドル、運賃0.81ドルで総コストは57ドル。これをEVERLANE社は125ドルで販売し、他社であれば285ドル位ですよ、というような具合です。これには驚かせられました。
コスト構造を透明化しています。その上で自社の製品が高品質でリーズナブルなものであることを立証しているのです。日本でも安売り等様々な業態が生まれていますし、ユニクロなどのSPA業態も増えていますが、コスト構造を見える化して、それを売りにしている企業は多分他にないでしょう。コスト構造だけでなくどのようなサプライヤと取引があるか、という事自体機密事項として管理していることも少なくありません。
そういう意味では正に「徹底的な透明性」と言えるでしょう。これは「非常識な経営」と言えるでしょう。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。