Wiiは何が違うのか

2008.01.12

営業・マーケティング

Wiiは何が違うのか

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

Wiiフィットが発売1ヶ月で100万台を突破した。Wii用ソフトとしては最速ペースだという。パッと見には体重計にしか見えないゲーム機が、なぜこれほどまでに売れたのだろうか。


任天堂はゲームの世界にパラダイムシフトを引き起こした。兆しは以
前からあった。DSである。一昨年の冬ぐらいから売れ出したDSの
ゲームがある。『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』であ
る。このゲームは松嶋菜々子のテレビコマーシャルのおかげで人気に
火が点いたたと思われている。確かに印象的なCMだったしキャラク
ターも十分に魅力的だった。しかし、あのソフトが大ヒットした本当
の理由は他にある。従来ゲームユーザーではなかった人たちがこぞっ
て買ったからだ。

続いてDSはゲームソフトにまったくあたらしい世界を切り拓く。足
し算・引き算に漢字の書き取りまでをもゲームとしてしまった。幼児
教育のためのツールとして、ゲーム的な要素を取り入れたものは以前
からあった。が、任天堂はこうしたツールとはまったく逆のアプロー
チを採る。主目的・教育、方法論・ゲームではなく、主目的がゲーム
でありその方法論として教育的要素を取り込む。こうした開発された
一連のゲームも新たなユーザーを開拓する。

そしてDSのソフト開発と併行して(あるいは先行して)Wiiの開発が
進められていた。これこそが従来のゲーム像を根底から打ち破る最終
兵器となる。

開発思想の違いは、パーツの活用法を見れば明らかだ。Wiiにはもち
ろん最先端の半導体技術が活用されている。が、その技術を活用する
ベクトルが、たとえばソニーとはまったく異なる。ソニーはPS3のた
めに4600億円もの投資をしてCELLプロセッサを開発した。その結
果、より速く、より豪華な映像をPS3は得る。これも一つの極みであ
る。ただし、CELLが実現したPS3はあくまでも従来型ゲームの延長
線上にある。

しかしWiiは違う。最先端の半導体技術を活用すれば何ができるの
か。発想段階で間口を思いっきり広げた。新たなゲーム開発をゼロ
ベースからスタートさせたともいえるだろう。その結果、採用された
方向性はソニーとはまったく逆である。すなわち最先端の半導体を使
うからこそ、チップを従来より小型化でき、電力消費を抑えることも
でき、マシンを小さくできる。電力消費を抑えられれば一日24時間
中ずっと通電できる。すなわちネットにつなぎっ放しすることが可能
だ。Wiiチャンネルにつながる発想である。

ソニーと任天堂のベクトルは、たとえるなら最先端の自動車技術を活
用してF1をめざすのか、ハイブリッドカーを作るのかといった違い
と同じだ。そもそもベースとなるコンセプトがまったく異なるのだ。
このコンセプトの違いがPS3とWiiの違いである。

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