ソニーが今年7月、クラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ね備えたサイト「First Flight」を立ち上げた。その背景には同社が力を入れる新規事業創出プログラムがある。新たな顧客価値の創造を目的に、社内から提案される新たなビジネスコンセプトのスピーディーな事業化を促そうという取り組みには、創業から全盛期にかけての“ソニーらしさ”が感じられる。その最新の取り組みを追う。
■技術が支える新規事業と、“共創”という新しい取り組み
ソニーが10月29日発表した2015年4~9月期の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が1159億円の黒字となり、前年同期の1091億円の赤字から一気に転換している。中間決算として最終黒字を実現したのは5年ぶりだという。日経新聞によれば、「画像センサーやゲーム、音楽事業が好調だったうえ、不振の携帯電話事業の赤字幅が縮小した」とあるが、将来を見据えた取り組みとしては、同社の新規事業創出プログラムに大いに着目したいところだ。
今年7月、ソニーは新規事業創出プログラムの新たな施策として、クラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ね備えたサイト、「First Flight」(ファースト・フライト)をオープンしている。これは、事業化の初期段階にあるプロジェクトに対して、リアルな市場ニーズを検証。サイト内において顧客とのダイレクトな対話を通じた共創型の開発・商品改善を行ない、タイムリーかつ規模に対して最適化された販売の機会を提供して、新たな事業の立ち上げと成長を後押ししていくというものだ。
これまで、“誰でも発明家になれる”スマートDIYキット「MESH」や、文字盤とベルトが電子ペーパーでできた“柄が変わる時計”「FES Watch」の販売のほか、新規事業創出プログラムの第1回オーディションを通過したプロジェクトである、“あなたになじむリモコン”「HUIS REMOTE CONTROLLER」のクラウドファンディングを実施。続いて行なわれたバンド部に機能が入った腕時計「wena wrist」のクラウドファンディングにおいては、サポーター2070人、達成率1071%(1億円以上)という驚異的な数字を叩き出し、多数の応援者のもと、2016年3月以降に支援者に届けるべく製品化へと入っている。
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2015.07.10
2015.07.24
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー
新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。