調達購買業務の機能や役割はだんだんと広がっています。一方で十数年前と比べると調達購買業務は細分化され分業が進んでいます。この先日本企業が分業と特化に関してどのように進めていくのがよいでしょうか。
この度の熊本県を中心とした地震で多くの方が被災されました。
心よりお見舞い申し上げるとともに一日も早い地震の収束と復興を祈念しております。
今回の地震の影響でやはりサプライチェーンの断絶がニュースとなりました。トヨタ自動車では4月18日から23日の一週間国内完成車ラインでの生産を停止し、25日以降段階的に稼働を再開しています。
今回の地震においてはトヨタ自動車は「人命第一」「地域の復旧」を最優先にする、というリリースを発表しており、震災直後よりトヨタ独自のリアルタイム交通情報を元に「通れた道マップ」を公開するなど行っており、無理やり生産を継続しないのがトヨタ流という論調まででているようです。
いずれにしてもこういう時期には如何にサプライチェーンの断絶を防ぎ、販売機会を逃さないかという点が調達購買部門へ求められる役割と言われます。
このように調達購買部門に求められる役割は益々範囲が広がっていくことが分かりますが、一方で調達購買部門は10数年前と比較するとものすごく分業化し特化されつつあるな、と感じる場面がたびたびあります。社内的、社会的にも10数年前から比べると重要視されるようになってきていますし、人員数も増えている企業の方が多いのではないでしょうか。
人員増は先ほども申し上げましたが分業化とともに進展しています。具体的には、カテゴリ購買、プロジェクト購買、地域購買、製品別購買、開発購買、購買企画、購買管理などの部署ができ分業化が進んでいます。またルーティン業務については調達購買部門の業務からは切り離され、工場や生産の業務として分業化を進めてきた企業も少なくありません。
先日ある外資系製造業でこういう話を聞きました。グローバルでの調達購買の組織体制が大幅に見直され、日本における体制はカテゴリ購買、プロジェクト購買、量産購買(いずれも仮称です)の3グループに分業、特化された、と。
グローバルで見ると日本にカテゴリ戦略やサプライヤ戦略の作成、ソーシング意思決定等の戦略的意思決定の機能を持たせる必要はなく、基本は分業、専門化、標準化の方向であり、できるだけ低コストでオペレーションを回す方向になることは止められません。
しかし、このような分業、専門化、標準化の方向が本当に目指すべき方向なのか私は疑問を感じざるを得ません。
そもそも分業とは古典的な経営学の一つの代表的な手法であり、大きく3つのメリットがあると言われます。一つ目は分業することで専門化が進み、それにより生産効率が高まることです。二点目は一つの仕事に集中する事による習熟効果です。つまり同じことを連続してやることで仕事のスキルが上がり生産効率が高まるということ。最後の三点目は規模のメリットを出しやすいという点です。専門化するということは副次的にその業務を集中して行う人が限定されるので、多くの仕事量をこなすことができる、つまり規模のメリットを出しやすくなるということが上げられます。
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VoPM(Voice of Purchasing Manager)レポート vol.1
野町 直弘 / 調達購買コンサルタント
パーチェシングマネジャーによる市況、景況感のレポートを発行いたしました。当レポートは、各業界・企業の調達購買マネジャー(PM)による市況動向や予測、景気動向などについて討議し、それを発信していくものです。
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2020.02.12
2009.02.10
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。