「家電ライフスタイルプロデューサー」として、YouTubeも始めて、活動の場を広げてきた神原サリーさん、そして「サービス」をサイエンスと捉え、サービスを事業のコアとして推進すべきだと提唱する松井拓己さん。このお二人で、これからの時代、モノや情報の提供側として、サービスをどのようにとらえ、顧客に提供していけばいいのかを語り合っていただきました。
神原サリー様(家電ライフスタイルプロデューサー)
松井 拓己様(サービスサイエンティスト・松井サービスコンサルティング 代表)
今日は神原サリーさんのアトリエに、松井さんがお邪魔させていただきました。楽しくお話しできればと思います。サリーさん、いま「これは!」という商品はありますか。
神原 私の今の最大のテーマはポータブル電源です。ポータブルソーラーパネルを組み合わせて、ベランダで発電する「電気のちょこっと貯金」を楽しみながら、もしもの時の備えというより日常のために使っています。スマートフォンの充電をしたり、このアトリエにある調理家電で使ったりしています。日常で使うことで節電になりますし、自分で電気をつくるのはすごく楽しいですよ。
松井 ポータブル電源は僕も持っています。キャンプが好きなので、キャンプ場にポータブル電源を持って行きますが、日常では使っていません。
神原 使わないとだめです! ありとあらゆるものが賄えるので楽しくなりますよ。今日は天気が良いからとちょっと充電したり、太陽が役立つと思うと嬉しいです。でも、楽しくなるのは女性が多いようですね。男性はアウトドアで使うものと考えるようで、バッテリーの残量が数%増えたからって喜ばないみたい(笑)。節電がどうとか、つけっぱなしにしたらだめだと言うより、自分でつくった電気を使うことを学べば、必然的に無駄に使いたくないと思いますよね。私、小学校を回って説明したいぐらいです。
松井 屋根にソーラーパネルが付いているのではなく、自分で出して発電するというひと手間もすごくいいですね。
松井さん、サリーさんの商品レビューをご覧になって、いかがでしたか。
松井 サリーさんはサービス的なお仕事をされていると感じました。メーカーは製造業としての都合を押し付けるようなPRはしますが、「こういうふうに使うと暮らしがもっと素敵になりますよ」といった使い方のところはほとんど言いません。人によって使い方、価値の引き出し方は変わります。サリーさんはそこに寄り添っていて、それが実にサービス的な感じがするのです。
神原 メーカーが気にするべきは、本当はお客さんのはずです。それなのに、頭の中の80%が横の競合メーカーのことなので、使う側に伝わらないし、魅力的に映らないし、ワクワクしないのです。まさに、サービスのお話だと思います。
松井 サービスの定義を知らない人が多いのですが、実はきちんとした定義があります。サービスとは、サリーさんがおっしゃっていることそのままで、「誰にとって」ということに尽きます。定義を言うと、例えば掃除機であれば、掃除機が発揮する機能の中で、お客さんの事前期待に合っているものだけがサービスです。事前期待とは、お客さんが元々持っている期待のことを言います。裏を返すと、いくらすごい機能があっても、そこに期待をしていないお客さんにとっては、それは価値のあるサービスではありません。誰にとっての機能なのか、誰にとってのナンバーワンなのか、どのような事前期待がお客さんにとってのサービスなのかをきちんと設定する必要があります。それがないから、サービス提供者が良かれと思って一生懸命やっているのにお客さんは全然喜んでいないということが、日本中でたくさん起きているのだと思います。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12