官製値上げとブランドバッグ

2024.04.03

経営・マネジメント

官製値上げとブランドバッグ

野町 直弘
調達購買コンサルタント

日産自動車が下請法違反で公正取引委員会から勧告をうけマスコミ各社が大きく取り上げています。マスコミの論調としては、ここぞとばかりに「下請けいじめ」だ、大企業の横暴であり、けしからん、というものとなっているようです。 しかし、これはある意味ステレオタイプな見方であり、実態は異なっているかも知れません。

注目すべきなのは、2022年末や24年3月に発表された企業名については「当該事業者名の公表は独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない。」と注記
されていることです。つまり、法律違反はしていないけど、ちょっと危ないから公開しますということです。

このような流れは政府が賃金を上げたいという想いがあるからでしょう。23年の春闘による大企業中心としたベア率は3.58%で24年はそれを超えると言われています。一方で中小企業は
いまだ賃上げが追いついておらず、それは価格転嫁が進んでいないからであり、大企業側は価格転嫁を認めるべきだという政策をとっているのです。まさに官製値上げと言えます。

私は官製値上げを否定するつもりはありません。賃金アップや適正なインフレは日本経済に活力を与えますし、以前のメルマガでも書きましたが、適正な値上げや価格転嫁はするべきでしょう。

一方で、下請法違反の勧告や企業名の公開が増えている=「下請けいじめ」が増えている、というような単純な構図ではないということも明らかでしょう。

しかし、今回の政府の働きかけの根底にある考え方は、「大企業は下請け企業をイジメるもの」という既成概念によるものは間違いありません。しかし、私が知っているバイヤーや調達購買部門で「下請いじめ」などやってる企業はありません。むしろ官製値上げを働きかける国に対して、右往左往している、のが私が知っているごく普通の調達購買部門なのです。

このようなことを考えている中、先日こんな記事が目にはいってきました。筆者の名誉のためにリンクを貼ることはしませんが、要約すると、こんな内容です。

精密機械メーカーの購買課長は購買一筋30年過ごしてきている。その課長は、ほぼ毎日お昼時に納入業者を引き連れてランチに出向いている。また、スマホが最新のiPhoneに変わったり、ボロボロの通勤カバンがハイブランドになったりしているなど、納入業者との関係に問題があったようだ。ところがある事件がきっかけとなり、この会社では、購買課という部署が廃止され、部署ごとによる資材調達制度に切り替えられた。当の課長さんは、孫請け会社の運送会社へ転籍させられた。

まさか、今どきこんなバイヤーはいないでしょう。割と最近の事例ですが、2016年にある大手電機メーカーのバイヤーが中国で過剰な接待をうけ、会社から処分を受けたことが、報道されました。この事案は多くの企業で接待や贈呈品などについて、法遵守やそれ以外も含むコンプライアンス遵守を徹底するきっかけになったのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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