カスハラは従業員の精神を蝕む。カスハラを放置すれば企業の存続を脅かすことになる。経営者はしっかりと認識すべきだ。
顧客が企業の従業員に理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化している。
カスタマーハラスメントとは、顧客による店員やサービス提供者への過度な要求や無理なクレーム、威圧的な態度、不当な扱いなどの行為のこと。「カスタマー(顧客)」と「ハラスメント(嫌がらせ、迷惑行為)」を組み合わせた造語だが、和製英語ではなく立派に世界で通用する(しかし「企業の従業員が泣き寝入りする割合」を考えると、日本でこそ注目されるべきだろう)。
カスハラの事例は対応企業事例などで公開されているし、SNSなどでも結構見ることができる。それらは氷山の一角と云えようが、それでも多様な業種の従業員がひどい目に遭っていることは分かる。なかには「嫌がらせ」「迷惑行為」のレベルをとっくに超えて「犯罪行為」としか言いようがない例も少なくない。
ただしカスハラを行っている当人としては「迷惑行為」と認識しているケースは少なく、その大半は「正当なクレーム」だと認識していると考えられる。つまり「企業側が間違っているから問題点を指摘してあげて、改善を要求しているだけだ」という認識なのだから厄介だ。
では客観的に見た時、「カスハラ」と正当な「クレーム」との境目はどこにあるのか。幾つかの専門家の解説や厚生労働省の「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」を総合すると、どうやら次の2つのいずれかに関し社会的常識から考えての妥当性を欠いた場合、それは(正当な「クレーム」ではなく)カスハラとして糾弾されるものになるということだ。
①要求内容
②要求の際のやり方
例えば1000円のケーキを買ったところ、持ち帰って家で開けてみたら、形が崩れてしまっていた。せっかくの誕生会が台無しだ、どうしてくれるとお店に文句を言う。ここまではまぁいいとして、その代償として10万円を要求したとしたら、多分カスハラとされよう(①の問題)。
また、その要求内容自体は「替わりのケーキと迷惑料幾ばくか(特に指定しない)」といった妥当なレベルだとしても、その要求の仕方が(②の問題)「(店の人が謝っているのに)1時間以上も店頭や電話で文句を言い続けて営業を妨害する」になれば十分なカスハラだし、「SNSで拡散させるぞ」と脅かせば脅迫という立派な(?)犯罪になる。罵声を浴びせたり従業員個人の人格を否定したりするような言動もアウトだ。
厚労省の最新調査である「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、セクハラやパワハラはさすがに減少しているようだが、カスハラはこの時点でまだ増えているようだ。
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
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