全国に10カ所、日本最多の地方拠点を持つのがフューチャーベンチャーキャピタル社。京都に本拠地を置く独立系ベンチャーキャピタルだ。後発、小規模ゆえに考え抜かれた同社の戦略展開の秘密に迫る。
第1回 「時代の流れ、一点突破、経営者の熱意」
■経営者の思いを後押しする
「創業以来、投資してきた企業のうち12社が上場までこぎつけました」
10年で12社の上場支援、単純に数字だけで判断するなら評価は分かれるのかもしれない。12社では「少ない」という判断も当然あり得るだろう。しかし、支援してきた相手先がスタートアップやアーリーステージが多いとなると、また話は変わってくる。
「上場した中では、カワムラサイクルさんなどが典型的な当社の成功事例といえるでしょう。成長資金が足りずキャピタル各社に対して投資を求めていた同社に資金を供給したのは、当時我々だけでした。積極的にリスクを取る当社のスタンスが、うまくいった事例だと思います」
カワムラサイクルといえば自転車業界では老舗、それなりの存在感を誇った企業でもある。ところが同社は阪神大震災によって壊滅的な被害を蒙る。あまりの打撃に創業家の心は廃業へと傾いていった。ただ会社を畳んでしまえば従業員に与えるダメージは計り知れない。
「雇用を守るために何とかしたいと立ち上がった人物がいました。彼が社長を引き継いで取り組む、何としてでも建て直す、第二の創業だと頑張っておられました。もともと技術力には定評がある会社です。技術力を活かして、マーケットを価格競争の苛烈な自転車ではなく、高齢社会を見据えた車イスへ完全にシフトして成長軌道に乗り始めている。これはいけると判断しました」
フューチャーベンチャーキャピタル(FVC)社がベンチャー投資する時の判断基準として、もっとも重視するのが経営者のレベルだ。社長の考え方はどうなのか、事業に対してどれほど熱い想いを抱いているのか。投資の是非に当たってはこの点を徹底的に吟味する。
「もちろん企業である限り、利益を追求することが大切なのは言うまでもありません。だから投資先が展開している事業の将来性は、あらゆる角度から厳しくチェックします。しかし、ただ儲かればよいというのも違う。そもそもなぜ利益が出るのかといえば、事業の原点に必ず経営者の思いがあるからです。『世のため・人のために』何かをしたい。この気持ちを我々は大切にしたい」
初めに気持ちありき。カワムラサイクルの場合は雇用を守ること、高齢社会に備えて優れた車イスを提供することを経営者が使命感として抱いていた。FVCからの投資により成長資金を得たカワムラサイクルは、今や車イスのトップ企業となっている。
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FMO第15弾【フューチャーベンチャーキャピタル株式会社】
2008.10.14
2008.10.07
2008.09.30
2008.09.22