フォーチュン誌の、「アメリカで最も働きたい会社ベスト100」の2009年の発表を見て、これからは、「感動サービス」、そして、「人財経営」の時代だと実感。
今年のランキングをさらりと見てみると、まず、2007年、2008年と2年連続で1位にランクインしたグーグルがネットアップにトップの座を明け渡して4位に、お馴染みの名前ではボストン・コンサルティングが3位、自然有機食品では世界最大のスーパーとして有名なホールフーズ・マーケットが22位、スターバックスが24位に入っている。
これらの企業に紛れて、今年、ランキング初登場でなんと23位に食い込んだのが、靴を中心とした品揃えでネット通販業を展開する「ザッポス(Zappos)」。日本では無名に近いが、アメリカでは型破りで先進的な経営スタイルでビジネス界を騒然とさせている、「旬」な企業だ。
昨年の暮れに、日本ではアマゾンが運営する靴とバッグの販売サイト「ジャヴァリ」が開設されて話題を呼んでいるが、アメリカでは、「靴のネット通販」という分野を開拓したのは、実はこの「ザッポス」なのである。
日経に掲載されていたジャヴァリに関する記事を読むと、「返品し放題の通販サイト」ということが見出しに掲げられている。タネを明かせば、米国靴ネット通販市場で、送料は行きも帰り(返品)も無料、365日返品OKというカスタマー・フレンドリーなサービスの仕組みを「当たり前」にしてしまったのは、他でもないザッポスだ。靴は試着してから買うもの。それをどうやってネットで売るのか・・・、というハードルを乗り越えるためにザッポスが初めに導入し、顧客の賞賛を得たサービスを、他社がこぞって真似たというのが実際の経緯である。
ネットというテクノロジーを用いることによって、販売プロセスから人の介入を取り除きコストを最小化する、というのが、いわゆる「ドット・コム」のオリジナルなアイデアだったが、このザッポス、その裏をかき、24時間対応でコンタクトセンターを運営し、「個」としてのお客様と、「個」としてのオペレーターのつながりに焦点を置いた感動サービスを売り物にしている。
ランキングに初登場の企業が23位という上位にランクインするのは、史上初の快挙だということで、特集記事の中でも大きく取り上げられている。ザッポスが経営の中心に据えるのは、「サービス・カルチャーの徹底」。人を重んじ、「社員ハピネス=顧客ハピネス=企業ハピネス」の構図の実現を追及した経営が注目を浴びている。
私もこの1年ほどザッポスを追いかけてきた。オバマ大統領の就任スピーチにもあったが、「Greed(欲)」の追求が大きな歪を生んできたアメリカの産業界。これからは、社員も顧客も、とにかく「人」を会社の最大のアセットとして中核に据える、新しい経営の時代が幕を開けることを願いたい。
革新
2012.01.26
2010.01.14
2009.07.30
2009.05.09
2009.05.07
2009.01.23
2008.04.25
2020.04.28
2020.07.15
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。