オフィスの効率的な利用や生産性向上を目的としてフリーアドレスが導入される例は、一次のブームは去ったものの、多くの事例が見られるようになった。しかし、成功事例の陰には効果が出なかった例も多く、悲喜こもごもの様相だ。そんな中で、コクヨがよりフリーアドレスの効果を発揮するソリューションを発売したという。そのソリューションをより強化する運用方法を考えてみたい。
フリーアドレスの導入の歴史と形態はWikipediaの記述が詳しい。
1987年3月・清水建設技術研究所で世界初の実現と、日本発の概念であるとは意外だが、<オフィスの一人あたり面積が欧米に比べて極端に狭いため><実質使える一人あたり面積を欧米並みにするためにとの、苦肉の策であった>との記述には納得させられる。
外出者などが半分という在席率なら、オフィスを2倍広く使えるという基本形の他に、一人あたりの面積はそのままで、オフィス面積を半分で済ませられるという面積効率化の観点での導入もあるという。
今回、コクヨから発売されたソリューションは、「OfficeDARTS」という「座席割り当てシステム」である。<社員の業務目的と利用時間から座席を割り当てるシステム>であり、<座席をランダムに変更することで、業務効率の改善やコミュニケーションの活性化が見込める>という。
オフィスの効率化を図ろうと、フリーアドレスを導入しても、どうしてもお気に入りの場所に居座ろうとする社員が現れる。共有デスクに書類や備品、私物を展開して「営巣」してしまうのだ。対策として、退社時にはデスク上のものを全てキャビネや私物ロッカーに収納することを義務づけても、また翌日にはお気に入りの場所に営巣し、周囲に実質的な「縄張り宣言」をしてプレッシャーを与えるようになる。ひどい場合、自分の縄張りを守るため、必要な外出の時の腰が重くなる。
上記のような、生産性向上の本末転倒を防止するためには、コクヨのソリューションは非常に効果的だ。何しろ、嫌も応もなくランダムに席を割り当てられてしまうのだから、縄張りは作れない。
さらに、<(社員が)「集中」「議論」「発想」など業務に関連した項目を選ぶと、目的に見合った座席を取得し、その座席での作業時間(30分~2時間)を割り当てる>という。業務目的にあった座席で一人、もしくは共同作業するメンバーが手中することができるため、生産性向上の効果が確かに期待できるだろう。
しかし、この効果を期待するためには、どような業務やシーンを「集中」「議論」「発想」と定義するのかといった運用上の定義や、どうすれば「集中」「議論」「発想」の効果・効率が上がるのかと行った設計が必要だ。どんなソリューションでも、システム単体では機能せず、「しくみ」が必要だということなのだ。
今回のソリューションの導入期待効果で「しくみ」が必要ながもう一つある。
<個人の座席を無作為に割り当てるもので、従業員同士のコミュニケーションの促進や業務内容に応じたコラボレーションの活性化につながる>という点だ。フリーアドレス導入効果でオフィススペースの有効活用以上に期待されるのが、こうした「部門・組織の枠を超えたナレッジの交換とコラボレーション」である。
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2015.07.17
2009.10.31
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。