ネット口コミ施策~フェアとアンフェアの境界線

2009.03.18

営業・マーケティング

ネット口コミ施策~フェアとアンフェアの境界線

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

ブロガーに直接、新商品のニュースリリースを流す。 また新商品発表会に招待したり、あるいは試供品を提供し、 その体験記をブログの記事として取り上げてもらうよう 働きかける。 これが、現在、最も典型的な 「ネット口コミ施策」 だと言えます。

個人として情報発信を行っている
ブロガーの影響力を活用するわけですね。

この方法自体は、以前からやられてきた、
マスメディアの記者たちに対するコミュニケーション施策と
ほぼ同じ方法をブロガー向けに転用しているだけですから、
問題はないと思います。

しかし、以前も書きましたが、
上記の方法が、倫理上好ましくない行為と
みなすべき場合があります。

それは、

・記事掲載に対して金銭的な報酬を与えること

そして、

・金銭的な報酬をもらうことを条件に記事を書いている
 事実を記事中に明示しない(あるいは意図的に隠す)

場合です。

金をもらって記事を書くのですから、
その記事は、実質的に「広告」です。

実質的に「広告」であるにも関わらず、
あたかも自分の意志で書いたかのような記事を
掲載するのは読者を欺く「やらせ」になります。

つまり、「アンフェア」ですよね。

当然ながら、マスメディアの記者は、
金銭的な報酬を条件として記事を書くことは
ありません。(倫理感のない人はさておき・・・)

しかし、個人の立場で日記なものを書いているブロガーに
対しては、金銭的な報酬を与えて記事を書かせるという手段が、
倫理面に対する配慮を欠いたまま、なし崩し的に普及して
しまったのです。

とはいえ、私個人としては、

記事中に報酬をもらっていることを示す=広告だと認める

のなら「金銭的報酬有り」でもいいと思っています。
読者を欺いてはいないですからね。

その点で、これなら「フェア」と言えます。

ただし、「ちょうちんブログ記事」を
好んで読みたい人はそうそういないでしょうから、
そのブログへのアクセスは減ることになるでしょうけど。

報酬を条件に記事を書いてもらう方法は、

「ペイ・パー・ポスト」(Pay Per Post)

と呼ばれています。

この施策を実施するなら、前述したように

「報酬有り記事であることを明示する」

のが倫理的に望ましいはずです。

しかし、悩ましいのは、
報酬有り記事、すなわち

「広告」

であると認めた瞬間に、もはや

「口コミ」

とは呼べなくなってしまい、

口コミならではの効果

も低下するという矛盾をはらんでいる点でしょう。

このため、ブロガーを組織化して、
ペイパーポストを展開している事業者の中には、
ブロガーに対して、

「報酬有りの記事であること」

の明示を義務づけないところも
あるようですね。

現時点ではまだ、
ネットでの口コミ施策のどこまでがフェアで、
どこからアンフェアとみなされることになるのか、
共通認識が確立されていません。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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