『ロフトワークドットコム』はクリエイティブのインフラサイトである。抱えるクリエイター数は1万人あまり、そのクリエイターをクライアントと結ぶのがロフトワークのプロジェクトマネジャーだ。単なるマッチングではなく、プロジェクトマネジメントを付加価値とするロフトワークのシステム、その背景にある考え方を紹介する。
最終回
「ブランドマーケティングで世界へ」
■ブランドマーケティングに徹する
「実は3年前ぐらいまでは、いわゆる営業をしたことがありませんでした。仕事がなくて困る、ということがなかったから」
クライアントの望みをクリエイターが間違いなく理解できる言葉に翻訳し、日本中のクリエイターの中から案件ごとに最適なスタッフをアサインし制作する。プロジェクトマネジメントが的確にできるロフトワークのシステムが、クライアントに極めて満足度の高い結果を残すのは当然だ。
「おかげさまで一度お仕事をさせていただくと、気に入ってもらえることが多く、そこから新しいクライアントさんを紹介していただくケースがほとんどでした。数年前まで社内に営業とかマーケティング部門はありませんでした」
とはいえ、株主総会ではそろそろ営業の壁にぶつかるとの指摘も受けている。今後の課題として林氏は営業を意識してもいる。
「主軸はブランドマーケティングですね。広報にはとても力を入れていて、私たちに何ができるのか、どんなカルチャーなのかについては積極的に情報発信してきました。これによってサイト経由での問い合わせを増やすことが、私たちにとっての営業ですね」
ブランディングに関してエポックメイクなイベントとなったのが出版だろう。林氏は『Webプロジェクトマネジメント標準』と題した著書を出している。『PMBOKでワンランク上のWebディレクションを目指す』と副題のついた同書には、ロフトワークがこれまで培ってきたノウハウが惜しげもなく書き尽くされている。
「私がスタッフに伝えたいなと思っていることをぜんぶ書きました。ちょっと大げさかもしれないけれど、ロフトワークのナレッジで言葉にできるものは一つ残らず盛り込んだつもりです」
現実問題としては暗黙知もあるから、ナレッジのすべてを文書化することは不可能だろう。ただ、ロフトワークならではの強み、プロジェクトマネジメントのノウハウを惜しげもなく公開してしまう態度には恐れ入るしかない。
「普通は隠すかもしれません。でも我々は何もかもオープンにして、クリエイティブコモンズにしていきたいと思っています。良いものをみんなでシェアすれば、ポジティブフィードバックが生まれ、もっとよくなると信じていますから」
この本は全国のクリエイターたちから大きな反響を集めることになった。
■To the World
「本を読んで、仕事に対する意識が変わりました。そんなコメントを全国各地のクリエイターからもらいました。これはスタッフにも励みになりますよね」
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FMO第22弾【株式会社ロフトワーク】
2009.04.14
2009.04.07
2009.03.31
2009.03.24