オバマ政権が誕生して5ヶ月弱。「Change」を合言葉に誕生した新政権は、世界をどう変えていくのだろうか? 宮台真司『日本の難点』にあった興味深い視点をもとに考えてみた。
「愛される米国」
宮台真司『日本の難点』(幻冬舎新書、2009年)にとても興味深い視点が記されていた。少し引用すると
「『オバマのアメリカ』は二つの柱を持ちます。第一は「愛される米国』。第二は「集積効果」。第一点から説明しましょう。オバマは10万人の雇用に1兆円使う計算で300万人の雇用を生み出すことを含めた、大規模な財政出動を宣言しています。目下の状況では不可避不可欠な「ケインズ政策」です。
でも米国は大規模な財政赤字と貿易赤字を抱えます。金融崩壊以前はドル建ての投資を呼び込むことでドル暴落を防いできました。もはやこの手法が使えない以上、中国や日本や諸外国に米国債をドル建てで買ってもらう以外ありません。米国が高飛車な態度を取ることは全く不可能になりました(同書、170ページ)」。
オバマ氏の『Change』は、まず「(米国債を買ってくれる国=中国、日本、その他から)愛される米国」に変わること。これが宮台氏の見立てである。
「愛される米国」と中国の関係
米国債がどうなるのか。これは、世界中に散らばっている米国債を持っている国、投資家の最重要関心だろう。なかでも中国である。同国は昨年9月、日本を抜いて世界最大の米国債保有国となった。
中国が約56兆5600億円、日本は55兆4200億円(→ http://www.afpbb.com/article/economy/2540806/3534433)。わずかとはいえ中国の方が米国債をたくさん持っている。もちろん、これで打ち止めではない。『これから』アメリカは、300万人の雇用を維持するために30兆円の財政出動をする。財源は国債である。その引き受け手として期待されているのは、誰か。まず第一には中国であり、続くのが日本なのだろう。
日本にとってのアメリカ、アメリカにとっての日本
では、米国の視点から見れば、中国と日本にはどんな違いがあるだろうか。『日本の難点』によれば、日本は以前からアメリカの年次改革要望書の要求に従っていたという。
「あまり知られていませんが、学校完全週休二日制実施も、郵政民営化も、裁判員制度導入も、米国資本に有利なゲームへとシフトさせるべく、米国が年次改革要望書で要求していたことなのです(前掲書33ページ)」。
これが事実だとすれば、米国債の受け入れ要求に対しても日本は抗う術を持たないことになる。米国の年次改革要望書を見たわけではないので、その存在と内容については判断を留保する。
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