米国時間7月22日、アマゾンが、「ザッポス」という会社の買収を発表した。その買収の背後にあるアマゾンの真意は・・・?
「ザッポス」については、以前、「最も働きたい会社ベスト100に見る、感動サービス時代の幕開け」という題名で、このサイト上でも書かせていただいたことがある。ザッポスは、米国で靴のネット通販という市場を切り開いた、パイオニア的存在である。それこそ、アマゾンの「ジャヴァリ」が産声を上げる前のはるか昔に、「ネットで靴を買う」という非常識を常識に変えたのが、ザッポスであった。送料は行きも帰り(返品)も無料、365日返品OKなど、今日、靴のネット通販市場でスタンダード化しているサービス・ポリシーの数々も、もとはといえばザッポスが考案したものだ。
そのザッポスを、アマゾンが買収した。そのニュースを耳にした時、私の体の中に衝撃が走った。
この買収が、ごく普通の買収でないことが、一目瞭然であったからである。
普通、買収というと、強者が弱者を買う、というイメージがある。
この公式にあてはめて考えると、アマゾンが強者、ザッポスが弱者、ということになるが、実のところはどうか。私はそうは思わない。
「Customer Obsession(顧客満足への執着)」を共通項としながら、アマゾンとザッポスは、いわば対極にあるアプローチをとってきた。アマゾンは、「最新のITを駆使し、顧客満足を自動化する」、そして、ザッポスは、「人とITの強みをフル活用し、最強の顧客感動体験を創造する」アプローチだ。「ウェブ時代における究極の顧客エクスペリエンスの実現」という点で、アマゾンに勝てるのはザッポスしかない、と、私は常日頃からずっと主張してきた。
実は、一年ほど前から、私はザッポスの研究を続けてきた。「感動サービス」の時代に、モノではなく、ハピネスを売り物にする新しい流通の姿として、ザッポスから学んだことを、最近、本に書き上げたばかりだ。
ザッポスは、「企業文化こそが、ブランドであり、競争優位である」と公言して憚らず、会社最大のアセットである、「人」に並々ならぬ投資をする。顧客エクスペリエンス創造の中核となるのは、「CLT(顧客ロイヤルティ・チーム)」と呼ばれるコンタクト・センター。コール・スクリプトも、対応時間の制限も存在しない、常識破りのコンタクト・センターである。顧客の心を揺り動かすためなら、「ほとんど何をしてもよい」裁量権をオペレーターがもつコンタクト・センターは、顧客が忘れることのできない、感動のサービスを日々創造している。
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サービス経営
2009.07.23
2008.09.13
2008.08.12
2020.03.05
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。