今年の7月、保護者の年収と大学進学率の相関関係を示す東京大学大学経営・政策研究センターの調査結果が発表された。それによれば、保護者の年収が高くなればなるほど子どもの大学進学率が高くなる傾向にある。由々しき事態である。しかし、金持ちの子どもだけが大学へ行けるというのは昔からある古い古い問題なのだ。
●保護者の年収と大学進学率●
少々古い話になるが、今年の7月、保護者の年収が、
子どもの大学進学率を左右するという
東京大学大学経営・政策研究センターの調査結果が
発表された。
それによれば……
年収が200万円未満の保護者の家庭では
28.3%しか大学に進学できず、
600万円以上800万円未満なら約半数の49.4%、
800万円以上1千万円未満なら54.8%、
そして1200万円以上となると年収200万円未満の
倍以上である62.8%が大学に進学していた。
近年、保護者の所得差によって子どもの受ける教育や
進学率が、影響され、それが世代を超えた「格差」に
つながるとして社会問題化しているが、
この調査で、年収と大学進学率の相関関係が
はっきりと、確認できたわけだ。
今回の調査で興味を引くのは、浪人生も含めた報告であ
るという点だ。当然、保護者の所得によって、浪人がで
きるかどうかが分かれる。保護者の所得が多いほうが、
その点でも大学進学に有利だ。
もう一つ興味を持ったのが、国公立大学の進学率である。
国公立大では年収600万円未満はどの層も10%強、
1200万円以上でも12%強と大きな差はない。
国公立大学は、私立大学に比べ、学費も安く、地域にお
けるステイタスも高い。
保護者は多少無理してでも進学させる価値があるのだ。
●「学校歴社会」から「学習歴社会」へ●
保護者の所得差によって子どもが進学する学校に大きな影
響が及ぶという現状は、確かに憂慮すべき事態である。
しかし、勘ちがいしてもらっては困るのだが、これは今
に始まったものではない。昔から、保護者の所得格差が、
子どもの学校歴格差を作っていた。
それが、なぜ、昔は目立たなかったかといえば、4年制
大学の進学率は1974年までは、せいぜい25%だっ
たからだ。
それが、平成に入って急カーブで上昇し、2003年に
は、40%を超えた。短大への進学も含めれば、大学進
学率は、50%を超えている。
2人に1人が、短大・大学に進学する状況になり、所得
格差と学校歴格差が俄然注目されるようになってきたのだ。
所得格差と学校歴格差の相関関係は、確かに解消される
べきだろう。だが、教育が保護者にとっては、子どもの
未来への投資である限り、投資ができる層と投資ができ
ない層で格差が生じるのは必至だ。
この問題への解決策は、「学校歴」の解消と、
「学習歴」の尊重というセットで考えてみるのが、
私は良いと思っている。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。