すべてを時価評価する公正価値オプションとは:IFRS第9号金融商品

2009.12.14

経営・マネジメント

すべてを時価評価する公正価値オプションとは:IFRS第9号金融商品

野口 由美子

国際会計基準の金融商品会計には公正価値オプションがあります。すべてを時価評価する処理で日本の会計基準にはないものです。新しいIFRS第9号では公正価値オプションの取扱いが変わりました。

本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。

国際会計基準では
有価証券やデリバティブなどすべての金融商品を時価評価し
変動を当期の損益に計上する公正価値オプションが選択肢として
認められています。

これは日本の金融商品会計にない規定です。

ただし、
国際会計基準でもやみくもに何にでも公正価値オプションを認めているというわけではありません。
特定の場合のみに選択することができます。
現行のIAS第39号では
以下の3つの場合に公正価値オプションが認められています。
(1)会計上のミスマッチが生じている場合
(2)会社が公正価値で管理を行なっている場合
(3)組込みデリバティブである場合

(1)の会計上のミスマッチとは公正価値評価を行わないと不都合が
生じる状態のことです。

例としてはリスクをヘッジするつもりで行なっている取引で
ヘッジ会計を適用していない場合があります。
本来はヘッジ会計をしたいところなのですが、
ヘッジ会計には取引の事前、事後に
いろいろな手続を行なうことが必要で、非常に面倒です。
そのような手続を行なわなくても公正価値オプションを選択して、
ヘッジ会計と同様の効果を得ることができるということです。

この例だと、公正価値オプションは非常に便利に感じられますが、
選択には注意しなくてはならないことがあります。
公正価値オプションは一度選択したらやめられないということです。
ヘッジ会計の場合は会社の意図により途中でやめることができます。

(2)は会社の意図を重視している規定です。現行のIAS第39号では
金融商品を保有する会社の目的、意図が重視されていました。

この(2)は、新しく公表されたIFRS第9号ではなくなっています。
保有目的を重視するのではなく、
金融商品の性質、会社のビジネスモデルを重視する立場に
変更されたからです
(詳しくは、前々回の記事をご参照ください)。

(3)は組込みデリバティブについて
区分処理に対する選択肢として、全体を公正価値で評価することを
認めるものです。

この(3)もIFRS第9号ではなくなっています。
なぜかというと、
IFRS第9号で区分処理は要求されなくなったからです。

つまり、
現行の基準では3つの場合に
公正価値オプションが認められていましたが、
新しい基準では「会計上のミスマッチ」の場合に
公正価値オプションを使えるということになります。

ここで1つ疑問に思うのは
公正価値オプションがあるのなら、
ヘッジ会計はいらないのではないか、ということです。
ヘッジ会計の指定を行なうために文書や管理体制を整備し、
ヘッジの有効性を定期的に評価するのは非常に面倒です。
それなら公正価値オプションで済ませてしまいたいということに
ならないでしょうか。

ヘッジ会計は現在審議中で改訂されることになっています。
来年早々にも公開草案が出る予定なので、
こちらの動向にも注目していきたいと思います。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。