もろもろの格差の問題を、どれだけマクロ観点で正確に論じようと、個々の人間の自己蘇生力を強めるわけではない。一人一人の「想う力・志す力」に焦点を当てなければならない。
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「いやー、毎年の新入社員たちは何事も受け身になるばかりで」
「最近の学生がますますこぢんまりと保守的になって」
「ゆとり世代は何かと覇気がなくて」・・・
こうした「イマドキの若者」論(小言?)は、
いつの時代にも先行世代のおじさん・おばさん・上司・経営者・学者などから出てくる。
しかし、私はあまり一般論で先入観を持たないようにしている。
やはり、それは個別の人間の問題なのだ。
どの時代・どの世代にも受動的・保守的・覇気のない人間はいるし、
逆に、能動的・革新的・覇気に満ちた人間もいる。
とはいえ、この両者の格差は看過できない質のものになってきている。
起業家養成の活動を行う「ETIC」 (代表理事;宮城治男)というNPOがある
そこに集う学生や若年社会人たちを見ていると、一般論として揶揄される若者とは全く違う。
「社会起業」という想いを軸に、
さまざまな背景をもつ若者たちがとても熱く寄り集まってきているのだ。
ここでは、大学生の中にも早くから志を見つける者がいる。
彼らの熱気をみていると、
個々にはどんな就職・キャリア展開をしていくのか予想がつかないが、
その想いの強さを抱いているかぎり「どう転んでも大丈夫だな、この子たちは」と思える。
それほどに、青いけれど、元気である。
と、その一方で、意欲的に腑抜けしたような若者が多いのも事実である。
私は、大学での講義や企業での研修で、
個々人が潜在的に持つ成長意欲や仕事意欲、キャリア形成意欲を
思考の補助線を与えながらステップ・バイ・ステップで引き出し、
どのような方向性(ベクトル)や理想像(イメージ)で描けるか
というワークをやっているが、まったくペンが動かない人がけっこう出る。
(彼らは受講態度が不真面目なわけでなく、ほんとうに想い描けないのだという)
また、講義の後や研修の後に、
時間が許せば個別に相談を受けたりすることもあるのだが、
本当にもう自分のやりたいことの欠片も想い描けない人が来て、
「どうすれば自分の意欲が想い描けるのでしょうか?」とのっぺりした表情で質問されるときがある。
平成ニッポンが、平和の代償として、意欲的に去勢された人間を続々生みだしている。
―――そんな現実を私はひしひしと感じる。
とはいえ、それによらず、熱を帯びた人間だっている。
そこには、意欲を湧かす者と湧かさざる者との格差がある。
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ココ・シャネル(シャネル創業者)の名言;
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【志力格差の時代】
2010.02.01
2010.01.17
2009.12.28
2009.12.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。