近年注目を集めている 「行動経済学」 は、人間が必ずしも‘合理的’に判断したり、 行動したりできるわけではないことを 実験等を通じて検証してきました。
既に「行動経済学」についての書籍が
何冊も出版されていますのでご存知の方も
多いと思いますが、
「人間の意思決定や行動」
に関する様々な「効果」や「法則」が
発見されています。
さて、こうした効果の中で、
最もビジネス、というか商売に
活用されてきたのが
「アンカリング効果」
です。
これは、最初にある数字を示されると、
無意識にそれが基準(アンカー)となってしまい、
その後の判断が影響を受けてしまうというものです。
よく引用される実験としては、
以下のような質問に答えてもらうがあります。
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a)国連にアフリカ諸国が占める割合は、
65%よりも高いか、それとも低いか?
*「65」の数字はルーレットを回して出たもの。
協力者によっては「10」になるように細工されていた。
b)国連にアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?
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a)の質問文には、
65%
という数字が含まれています。
これは、ルーレットを回して出ただけの、
なんら根拠のない数字です。
実験に協力した回答者も、
そのことがわかっています。
それにも関わらず、
ルーレットが「10」=10%となった場合に
アフリカ諸国の国連に占める割合を
推測した結果は、
平均25%
でした。
一方、ルーレットが「65」=65%で
あった場合には、
平均45%
という回答になったのです。
つまり、根拠があろうがなかろうが、
最初に示された数字が無意識に基準と
なってしまい、回答が影響を受けて
しまうわけです。
なお、数字を示さない
(つまりアンカリング効果のない)
b)の質問に対する答えは、
平均45%
でした。
(正解:国連に占めるアフリカ諸国の割合:23%)
興味深いのは、
最初に示される数字が
突拍子もないもの
であったとしても、
影響力を発揮するという点です。
例えば次のような質問。
・サンフランシスコの平均気温は、
「摂氏292度」よりも高いか低いか。
サンフランシスコの平均気温は何度くらいか?
摂氏292度なんて、
ありえない平均気温ですよね。
もちろん、
この質問を見せられた実験協力者も、
実際のサンフランシスコの平均気温が、
3桁(100度以上)になるはずはなく、
2桁の数字を推測しました。
それでもやはり、このありえない数字を
示された人の方が、そうでない人よりも
高い平均気温を回答したのだそうです。
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アンカリング効果
2010.01.15
2010.01.15
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。