今年の干支が寅ということもあり、年初から「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という故事成語をよく目にします。有名なので、その意味は省略しますが、これにちなんで、今年のテーマとして「挑戦」や「積極性」を掲げている方もいるのではないでしょうか。特に日本人は、日本人は「積極性」や「自己主張」に欠けていると世界的に見られることが多いようです。この機会に「積極性」について改めて考えてみたいと思います。
正月恒例の箱根駅伝を見られた方も多いかと思われますが、昨年に続き山の神様を擁して連覇を飾った東洋大学の走りは素晴らしいものでした。東洋大学の連覇の立役者は柏原であることに異論はありませんが、個の力だけで勝てるものではないのが箱根駅伝の醍醐味であり、事実全10区間を通して全ての選手が区間10位以内に入っていたのは東洋だけだったのですが、この事実を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
これほど安定した力のある選手を集めている背景にはさぞかし綿密な戦略が存在するのかと思えばそうでもないようです。他の大学のように全国高校駅伝などで活躍した実績のある有望な高校生を取りこむのではなく、いわばダイヤの原石を地道に発掘し、育成指導により光輝かせているのです。このダイヤの原石を見分ける指標のひとつとして、「積極性」に注目しているようです。
今では山の神様とも言われる柏原自身も高校時代は無名の選手で、入学時の選手はほぼ例外なくインターハイの出場経験すらないことには驚かされます。また、今回柏原の陰に隠れて目立ちませんでしたが、7区で区間賞をとった田中も中高通じて目立った成績はなく通常であれば目に留まらない選手であったのです。
しかし、東洋大はその後の指導育成により見事光り輝かせ区間賞獲得まで至らせたのです。その時の東洋大学担当者の言葉がある雑誌で紹介されていました。
「田中はフォームも汚いし、背も低いけど、積極性が光っていたんです。」
実績や外見にとらわれないで「積極性」のような強い心を見抜く、そして、練習量だけでなく自主性を重んじ、「積極性」をうまく自律的な行動に昇華させていく、この様な育成方法にも強さがうかがえます。やらされる練習ではないからこそ実力が身につくのでしょう。選考時の保有能力よりも心のあり方を重視し、育成に力を入れる戦略は今の強い企業にも通じるところがある。
言うまでもない事ですが、ここでいう「積極性」というのは、大きな声を出すとか行動が活発であるとか外面で判断できることではなく、内面の心のあり方ですが、育成の前提としての当事者の「積極性」の重要性が感じられます。
日本の多くの偉人に影響を与えたた天風会の創始者である中村天風氏は「人生とはその人の心が築いてくれるものであり、常に心は積極的状態に保つことを忘れてはならない」と言っていて「積極」の重要性を説いています。同時に、他人を押しのけて「勝利」を考えるような肩肘張った生き方を「積極」と誤解してはいかないとも言っています。
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2010.01.27
2010.02.04
松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役
人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。