改革は地方から。ここ数年目立つのが、元気で、はっきりと物を言う知事たち。言行一致で改革を進めるその活躍ぶりは、日本の将来に明るさを感じさせる。地方自治の要、都道府県政を指揮する知事は、企業に例えるなら経営者である。様々な抵抗を打ち砕きながら、改革を遂行する考え方、行動力はマネジメントの良き手本となる。知事の改革を紹介、シリーズトップバッターを飾っていただくのは、埼玉を劇的に変えた上田知事である。
最終回「文化を変えるのがリーダーの仕事」
■一文は40字までルール
「知事はリーダーです。リーダーの仕事はといえば、文化を変えること。これに尽きるのです」
典型的な例が職員が書く文章である。役所の文書を読まれたことのある方なら、おわかりになるだろう。その独特特有の言い回し、とにかく一文が長い文章は、極めて読みにくくわかりづらい。
「読めば読むほど、イエスなのかノーなのかがはっきりしなくてイライラしてきませんか。一つの文章の中にいくつもの選択肢が盛り込まれていて、一番良いのがどれなのかをあえてはっきりさせないように書いてある。おまけに長い。一つマルが付くまでに400字ぐらいあるような文章を平気で書くわけです。なぜ、そんなややこしい文書を作るのかといえば、その理由は単純明快。結局、責任の所在をはっきりさせたくないからです」
そこで知事は思いきった策に打って出る。役所の文章に字数制限を付けたのだ。一文は必ず40字までに納めること。そしてイエス・ノーをはっきりさせる。こうした文章ルールを定めたのはおそらく、日本の全行政機関でも前代未聞の出来事ではないだろうか。
「さらに返事は必ず2日以内にするんだと、これもルールにしました。どうしても2日以内に返事できない場合は、返事をいつ出せるかを2日以内に連絡すること。このルールを徹底することで、ずいぶんと変わりましたね」
検討しますとか、検討していますといって時間だけが過ぎていくことに歯止めをかけたのだ。そもそもあえてややこしい文章を書けるということは、その知的レベルの高さの表れでもある。その能力を後ろ向きに使うのではなく、すべて前向きに発揮させるためのルールなのだ。
「みんな、ほんとは、これじゃまずいだろうなと頭ではわかっていたはずなんです。だから、誰かが今のままでは良くないから、もっとはっきりしよう、すぐにやろうとかけ声をかければたちまち動きが変わりました」
そうやって県庁独特の文化までを上田知事は見事に変えてしまった。しかも指示を出すだけではなく、身を以て示すことで。だから知事自らが自分宛に来た手紙にまで目を通し、すぐに返事を出すのだ。そうした姿を目にすれば、周りにいる人間の行動も変わらざるを得ないだろう。
■多角的な視野を持てるように
「リーダーは、みんなの先頭に立って動いてこそ役割を果たすことができるのです。特に首長の場合は無任所のリーダーですから、あらゆる状況で何より求められるのが柔軟な思考ですね」
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埼玉県知事・上田清司氏
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