子どもの頃、「宿題」を好きだった人はいるだろうか? 私も嫌いだったが、教育コンサルタントとしてたくさんの授業を見てきて、授業がうまい先生に共通している一つの条件は、この「宿題」の出し方の上手さであると思っている。
─────
★『授業で何を実現するか!』
─────
20数年前、私が学習塾の講師をしていた時のことだ。日々、子どもたち
と接しながら、だんだんと膨らんでくる疑問があった。
「1回、1回の授業で何を実現するのが、子ども達にとって本当に意味あ
るものなのだろう?」
要は授業の成功は、何を持って推し量るのかということなのだが、これが
学習塾と学校では大きく違うように思えた。
まずもって学校では、大きな時間の流れの中で授業の意味をとらえること
ができる。たとえば、20年後、30年後……、子ども達が大人になった
時にその授業が役立てば、それで学校の授業は成功であったということに
なる。
しかし、学習塾では、そんな悠長なことを言ってられない。学校は子ども
達が毎日通ってくることが前提となっているが、学習塾では通塾に意味が
ないと思えば、すぐに退塾し、次の日には来なくなってしまうからだ。
1回、1回の授業と強調したのには学習塾のこんな性格がある。若かった
私は、こんな疑問に何とか答えを見出したいと、自主勉強会を当時勤務し
ていた塾で開いた。
そこで至った結論は、学習塾であっても、学校とはまた違った意味で、1
回、1回の授業をそれで完結してしまってはいけないということであった。
─────
★『「宿題」へと繋がる授業の組み立て方』
─────
授業の定義を考えてみよう。授業とは何か? 普通に考えれば、授業とは、
ある教科の単元を生徒に教えることである。だから、授業の成功・不成功
は、生徒が教えられた単元の知識を覚えて、活用できるようになっている
かどうかで測ることができる。それは、授業後に確認テストをすれば、簡
単に検証ができるはずだ。
しかし、この定義は、完全なものではない。この考えでは、学習塾内だけ
で勉強が完結してしまう。これでは、塾の使命を完結できない。学習塾は、
生徒の進学、合格にまで責任を負っているからだ。知識の定着はもちろん、
その活用にも責任を持ち、そして、最後には、入学試験という関門を突破
しなくてはならない。1回1回の授業はそこまで続いている。
そう考えると、1回1回の授業は、生徒が「自分一人で勉強ができ
るようになるきっかけ作り」を目的とすると定めた方が納得がいくよう
に思えた。
入試は、そもそも生徒が一人で向き合うものだ。1回、1回の授業で、生
徒が、その教えられた単元に興味を持ち、自分で勉強してみようと思うこ
と。授業で分かったことを元にして、自分で勉強してみようと生徒が思う
こと。それは家庭学習であったり、また自主的にものを調べる習慣づけで
あったり、といったものへと繋がって行く。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。