「日本企業は技術力がある、品質・サービスがよい」「国産は外国産より安全」「外部より社員の方が信頼できる」、最近よく聞くフレーズですが、それらを担保するデータも示されず、観念論的なものが多いのが気になります。 今回は、この神話を揺るがすようなケースを基に、「日本は技術、品質、安全、サービスに優る」「国産>外国産」「社員>外部」神話について考えます。
国土交通省がスカイマークに対し厳重注意を行いました。その内容は、飛行前点検で、客室乗務員が体調不良で十分に声が出せないのに気づいた機長が、緊急時の乗客の誘導等に支障をきたすと判断し、その乗務員の交代を求めました。これに対し、スカイマークの西久保社長と井手会長は、機長らを乗せて飛行機に向かうバスに乗り込み、乗務員を交代させずにそのまま運航するよう要求、機長が安全管理上問題があるとして拒否すると、客室乗務員ではなく、機長を別の機長に交代させて、その便を出航させました。
航空法では、運航に関する安全のための判断及びその措置の最終決定権を有しているのは機長であり、スカイマークも航空法に基づく運航規定で安全の最終判断は機長がすると定めていますが、スカイマークの西久保社長と井手会長との判断は、これを覆すものです。
加えて、スカイマークは、約2年間残っていた運航を拒否した機長との契約を即日解除しました。(出所:2010年3月9日 国土交通省発表、読売新聞、3月10日 産経新聞)
報道が正しければ、自分の職を賭してでも乗客の安全を守ろうとするこの機長の職業人としての倫理観は、非常に尊敬されるべきものです。この機長は、外国人であり、人材派遣会社からの派遣契約でスカイマークに派遣されていました。
今回の事例は一つの事例に過ぎませんので、「日本企業は技術力がある、品質・サービスがよい」「国産は外国産より安全」「外部より社員の方が信頼できる」という神話が完全に崩壊した訳ではありません。平均的には、日本企業の品質・サービスはよいかもしれません。
しかし、その割には、世界でのマーケットシェアを見ると、日本企業が上位を得られているのは限定的かつ減少傾向にあります。また、データもなく「日本企業は技術力がある、品質・サービスがよい」「国産は外国産より安全」と唱えているのは、競争の現場にいる企業人ではなく、政治家や知識人、マスコミなどである事を考えると、そうあって欲しいという願望や昔そうであったというノスタルジーのように感じられ、どっちもどっちという感があります。
私たちがいる調達・購買の現場は、必要とされているモノを確保するのが目的で、一般論やマクロな視点ではなく、最終的には目の前にあるモノ、担当者が信頼に足るものか否かをというミクロの視点が大切です。取引の目的が、短期的な物品やサービスなど具体的であればある程、企業や事業レベルではなく、物品や担当者といったミクロな視点が重要になります。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます