「ASPアワード2010」グランプリの実力と蟻の巣オフィスの思い出

2010.03.17

経営・マネジメント

「ASPアワード2010」グランプリの実力と蟻の巣オフィスの思い出

山本 亮二郎

リクルートで同期入社だった森雅弘氏と永田豊志氏は、2005年11月、それぞれが社長を務めていた二つの会社を合併させて、株式会社ショーケース・ティービーを設立した。

リクルートで同期入社だった森雅弘氏と永田豊志氏は、2005年11月、それぞれが社長を務めていた二つの会社を合併させて、株式会社ショーケース・ティービーを設立した。私が初めてお二人にお会いしたのは、それから半年後くらいだったと思う。赤坂の路地裏の細く急な階段を上ったところに、蟻の巣の断面のような、一つひとつの部屋が小分けになったビルがある。そのうちのいくつかの「房」が、当時のオフィスだった。房の中で、ファイナンスについて、事業計画について、投資前も投資後も、ずいぶん議論をした。

もともと森氏は名だたる外資系企業や大手企業を顧客に持ち、1996年の創業から一度も赤字を出さずに経営力を磨いてきた。それでも森氏は「1社だけでは大きな成長の絵は描けなかった」と当時を振り返る。強固な顧客基盤を持ちながらも、下請けでは知財が自社に残らないという悲哀を感じていた。さらに「動画」というリッチコンテンツに魅せられるようになると、より高い表現力やOne to Oneを可能にするシステム開発が必要になり、限界を感じ始めていた。

一方、永田氏には独自の企画力や開発力があり、CGキャラクターや出版ビジネスで既に名を上げていた。しかし、コンシューマー向けビジネスは多大な投資を要し、収益的にも不安定だった。そのため法人向けへの転換を図っていたが、営業面が課題となっていた。そのような中で、二人はお互いの強みを活かすべく、会社合併を決断した。

会社設立からちょうど1年後、二人は力を合わせて、その後の躍進のきっかけとなる『ナビキャスト』を完成させた。『ナビキャスト』は、企業のウェブサイトに訪問するユーザーが求めている情報を、リファラ、IPアドレス、Cookieなどから分析し、サイト内の最適なページへとナビゲーションするASPである。「自社サイト上で、サイト内の特定ページを案内するバナー広告が、ユーザーに応じて自動切り替えで表示される」と考えると分かりやすいかもしれない。たとえばECサイトであれば、セール期間中のみ表示することもできる。また、動画を配信すれば、あたかもお店の店員が接客対応をしているかのようなホスピタリティと利便性を提供できる。

その後、『ナビキャスト』のリリースによる新しい顧客開拓が効を奏し、さらなる増資も果たして、序々に規模を広げてくことになる。『ナビキャスト』から1年半後には、同社は『ナビキャスト フォームアシスト』をリリースした。森氏は、「実は、これは新卒1期生がお客様のご要望に何とかお応えしたいと思案を重ねる中で生まれた商品なんです」と嬉しそうに話す。『ナビキャスト フォームアシスト』は、EFOと呼ばれる入力フォーム最適化ツールである。ユーザーがサイト上で個人情報を入力したり、商品を購入するときに、入力フォームから離脱しないようにするツールだ。同社の調べでは、導入後は、ほぼ全てのケースで改善効果が見られ、入力完了率が平均9.68%向上したという。導入数はリリースから1年9ヵ月で470フォームを越え、圧倒的なシェアを誇っている。

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