国内最大規模の求職者データベースを持つエン・ジャパン。転職サービスをメイン事業としながらも、求職者には安易な転職を勧めず、求人企業に対しても慎重な採用を求める。ともすると自社の利益と矛盾しかねないポリシーの背景に秘められた同社の哲学を探る。
第1回 「求人広告の本質を問う」
■仕事を大切に、転職は慎重に。
「広告費にして200万円の求人広告と10万円の求人広告の違いは、何でしょうか。高い広告費をかける企業の方が、すべての転職者にとってベストな企業である、とは一概にはいえないですね」
エン・ジャパン社の問題意識を突き詰めれば、この一点に行き着くだろう。問題意識が芽生えた時期は、求人広告がインターネットにシフトする以前にさかのぼる。当時は全国で毎週のように発行される情報誌が、転職先を探す主な手段だった。
「紙媒体はスペースに限りがあります。1ページを丸々使って目立つ広告を出したい企業があれば、予算の制約がありページの何分の一しか使えない企業もある。予算によって大きさが決まるのは、広告ビジネスでは当たり前の話です」
いうまでもないことだが、広告枠の大きさが企業の内実を的確に反映し、その優劣を表すなどということはあり得ない。むしろ何らかの理由のために人が辞めていき、コストをかけてでも急いで人を集めなければならないケースもあるはずだ。
「ここに求人広告の問題があると私たちは考えていました。求人広告の対象はモノではなく、人なのです。私たちが扱っている広告は、求職者のキャリアに影響するし、その人の人生を左右しかねません」
対象がモノなら、失敗してもまた買い直せば済む話だ。ところが転職をしくじれば、そこからまた人生をやり直さなければならない。
「広告がたくさんある方が当社の業績は間違いなく上がります。入社してもすぐに辞めてしまい、社員募集が頻繁に行われるほど、広告出稿数は増えるでしょう」
しかし、そんな循環で本当に転職者のためになっているのか。あるいは、求人する企業に本当のメリットを提供できているのか。
「何かがおかしい、どこか違うんじゃないか、と創業者の越智は悩んでいた。この問題意識が彼の目を、自然にインターネットに導き、インターネットと出会ったときのひらめきにつながったのでしょう」
■人財を大切に、採用は慎重に。
「そもそも企業が求人広告を出す目的はなんでしょうか。第一義的には、人を採用するためです。しかし採用したら、それで終わりではないはず。本当の目的は、採用した人材が活躍し、業績アップに貢献してもらうことです」
であるならば、求職者に対してどんな情報を伝えれば良いのかが、真剣に問われるべきだ。もとより待遇が悪くて良いはずはないし、交通の便も良いに越したことはない。しかし、もっと大切なことがある。
次のページ『エン・ジャパン株式会社 関連リンク』
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
FMO第32弾【エン・ジャパン株式会社】
2010.04.08
2010.04.01
2010.03.25
2010.03.18