頼りなげに見える新入社員の表情は、どのようにすれば社会人らしく頼もしい顔つきに変わるのでしょうか。
人によってその期間は異なりますが、新入社員の顔つきや表情が、入社したときのそれとはガラっと変わって見えるようになる瞬間があります。ボーっとして何を考えているのか分からない顔つき、何か気合が入っていない雰囲気が漂う表情、不安や戸惑いや遠慮が見え隠れする感じに、周囲はつい「学生気分が抜けていない」と不満に思ってしまいますが、しばらくすると多くの新人達は顔つきが変わって、何となく「それなり」の雰囲気、時には頼もしくも感じられる表情が見られるようになります。
顔面エステ(?)をやったわけではないのに、顔つきが変わるというのは考えてみれば不思議なことです。ある程度の年齢がいくとその人生が顔に出ると言いますが、それは蓄積されたものが顔つきに表れるということなので、新人の顔つきが短期間で変わるのとは異なる現象です。
一度だけ事務所にお邪魔してお会いしたことがありますが、日大の芸術学部教授で、国際パフォーマンス研究所代表の佐藤綾子先生の著述によれば、「話す自信と喜びが、顔の表情筋をぐんぐんと引っ張って動かす。(中略)相手から学ぼうという気持ちのある人も、顔の表情筋がイキイキとよく動く。」のだそうです。顔には表情筋という筋肉が30ほどあって、それが表情を左右するのだそうで、表情筋を動かすのは自信と喜び、学ぼうとする気持ちなのだと(簡単に言えば)おっしゃっています。自信・喜びを感じさせる、もしくは学ぼうとする気持ちを彼らの中に呼び起こせば、社会人の顔つきに変えることができるということです。
新人を部下に持つ人達から、よく「早く成功体験を積ませたい」という言葉を聞きますが、それは成功体験によって自信や喜びを感じてもらおうということですから、これに非常に近い発想です。しかしながら、新人が業務で成功体験を積むことは簡単ではありません。普通は結構な時間がかかるもので、上司にも本人にもそのうち焦りが出てきます。成功体験をどのように積ませるか。二つの視点をご提供したいと思います。
一つは、業務外で本人の得意なことを役割として与え、その成果を皆で承認・賞賛してあげることです。思い起こせば私の新人時代、リクルーターとして採用に携わっていましたが、バブル期の超売り手市場ということもあってなかなか学生を口説き落とせず、やっているのは来る日も来る日も学生への電話かけでまったく成果らしきものが出せない期間が半年くらい続きました。
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2012.12.05
2012.12.12
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。