IFRSの収益認識は、基準書の改訂によりアプローチが大きく変わります。その中で、製品保証は売上から控除することが提案されています。これはどのような考えによるものなのでしょうか。
2010年6月に国際会計基準審議会(IASB)より公表された収益認識についての公開草案は、収益の処理について包括的な基準を定めることを目標としています。そこでは新しいアプローチが提案され、個々の会計処理にさまざまな影響を与えられると考えられています。新しいアプローチについてはこちらの記事を参考にしてください。
今回は新しいアプローチによると製品保証はどのように扱うのか、考えてみたいと思います。
よく製品を購入したときに一定期間の製品保証がサービスとして受けられたり、別途オプションとして保証を受けられたりすることがあります。家電製品を買った時のことを考えていただけると分かりやすいかもしれません。従来の国際会計基準の考え方では製品保証により将来提供する保証サービスを引当金として計上することになっていました。しかし、新しいアプローチでは製品保証を引当金とする考え方はしません。
今回の公開草案では、製品保証を2つのタイプに分けます。
①企業が顧客に製品を引き渡す前にすでにあった不具合が引き渡してから見つかった場合
②顧客に引き渡した後に顧客が製品を使用したことにより不具合が発生した場合
①の場合では、そもそもきちんとした製品が顧客に引き渡されていなかったことになるので、製品の引渡し、という当初企業が果たすべき義務が果たされていなかったと考えます。
②の場合は、①と違って製品の引渡しという義務自体は履行されています。しかし、引渡し後の不具合に対応するという別の義務を企業が負っていると考えることになります。
このように2つのパターンに整理されましたが、どちらの場合も共通することがあります。製品を引き渡した時に企業が負っている義務の一部が履行されていないということです。新しい収益認識のアプローチでは企業の顧客に対する履行義務が果たされた時に収益を認識します。そこで、どちらのパターンであっても、製品保証については収益を認識せず、保証サービスの提供に伴って認識することになります。
公開草案の例をもとにもう少し具体的に説明します。
製品を引き渡した時には販売価格全部を売上として計上しません。例えば、1,000円の製品を1,000個販売し、その製品には90日間の保証期間がついているとします。
従来ならば1,000x1,000=1,000,000円
が売上になります。
しかし、新しいアプローチでは過去の実績から1%が保証サービスにより交換することになる部分を見積もります。たとえば、保証サービスにより返品されるのが1%と見積もられた場合、1,000個のうちの1%である10個分の
1,000x10=10,000円
は売上として計上しません。
1,000,000-10,000=990,000円
が販売時の売上になります。この売上に計上されていない10個分は企業の棚卸資産として計上し続けます。実際の保証期間が終了したときに売上となります。
このように個々の取引を照らして考えてみると、新しい収益認識のアプローチはさまざまな影響があります。他の影響についても引き続き考えていきたいと思います。
野口由美子
株式会社イージフ
http://aegif.jp/
IFRS 収益認識の改訂
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