親であれ、教師であれ、私たちは往々にして、子どもと接するとき、彼らの行動を判断し、評価し、アドバイスをしてしまいます。でも、実はその前にやることがあるのではないでしょうか? たとえば、生徒の声に寄り添ってみること… ---------------------------------------------
私が理事を勤める私立学校は、以前は中退者も多く指導が難しい学校の一つでした。
私はその学校に週2日勤務をし、子どもたちと話をします。先日も、ある問題を抱えた高校1年生と話をしました。
学校に気持ちが向いていない生徒だということで、私が話をしたいと申し出て実現したものですが、担任の先生に事前に聞いた情報では、全くやる気がない生徒ということでした。
その生徒は、どんな先生と話をしても無気力で、話を聞いているのかいないのか分からないという評判でしたが、実際に話をしてみるとそんなことはありません。
私は、どんな生徒であっても、生徒と話す時には基本的に、街の親父(昭和30年代から40年代に下町にいたおせっかいでそれでいて優しく、尚且つ社会のルールには厳しい、頑固者のおじさん)で通します。
私のイメージでは街の親父は是々非々がはっきりしているし、何よりも私が、そんな大人たちに囲まれて育ったので、彼らが持つ教育的な高い価値がよく分かるからです。
ちょっと緊張している生徒を笑顔で迎えて、話を始めます。
中土井:こんにちは!私は中土井です。なんでこんなところに呼ばれるんだろう? って思っているじゃないかな。私が君と話をしたいと思って、担任の先生に頼んで呼んでもらいました。君の名前は?
生 徒:坂本竜馬です。(仮名)
中土井:いい名前だね。きっとお母さんやお父さんが、一生懸命考えてつけてくれたんだね。ところで、学校を辞めたいんだって?
生 徒:はい。
中土井:そうか。辞めたいのか。どうして辞めたいのかは、後で聞くとして、私から少し質問してもいいかな?
生 徒:はぁ・・・。
中土井:小学校の時は、何になりたかったの? 坂本君の夢は?
生 徒:はぁ?・・・。なんだっけ?・・・。そうだ!サッカーの選手。
中土井:サッカーの選手か。サッカーのどんなところが好きなの?
生 徒:え~っと。身体を動かすのが好きなんで。
中土井:そうか。坂本君は、身体を動かすのが好きなんだ。
生 徒:まあ。
中土井:中学では、サッカー部に入ったの?
生 徒:1年生の時は。
中土井:1年生で辞めちゃったの?
生 徒:そう。
中土井:何かあったの?
生 徒:めんどくさくなって。
中土井:そうなんだ。もし、サッカーをその後も続けていたら、どうなってたと思う。
生 徒:わかんない。
中土井:身体動かすのが好きだった坂本君が、サッカーを辞めたら、学
校は、つまらなくなったんじゃない?
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2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。