ワコールの隠れたヒット商品がある。ネットでは結構話題になった「小さく見せるブラ」である。ブラと言えば、寄せて上げて少しでも大きく、きれいに見せるのが売りかと思えば、そうではなかったのだ。
1週間で完売
ワコールが「小さく見せるブラ(→ http://store.wacoal.jp/site/chiisakumiseru/chiisaku.jsp)」をネット通販だけで売り出したのが、4月下旬のこと。これがバカ売れした。初回販売分は1週間で完売、「主力品の発売直後の同期間と比べ12倍以上だ(日経産業新聞2010年7月16日付1面より)」という。
しつこいようだけれど『大きく見せる』ブラの間違いではない。わざわざ『小さく見せる』ためのブラである。おかしいではないか、とストレートに異議申し立てに走ってしまうのは、自分がおっさん思考にはまっているからだろう。
ブラと言えば、大きい人はそれなりに、小さい人は少しでも大きく見せるために、あるいはフォルムを美しく整えるために、が常識だと思っていた。しかし、そうではないのである。その証拠に「小さく見せるブラ」は売れている。
一時は在庫がなくなり次第、販売終了とも言われていたようだが、8月には、豊かなバストをコンパクトに見せるブラジャー『CuCute(キュキュート)』が新発売された(→ http://www.wacoalholdings.jp/news/45062.html)。小さく見せたいニーズは確実に存在するのだ。
「小さく見せたい」ニーズは4位
このブラが開発された背景には、ワコールが実施している調査結果がある。調査によれば、バストを小さく見せたい人が、全体の1割程度いたようだ。ニーズ順位でみると4位だったらしい。
既成概念にとらわれていれば、その思考回路は次のようになるはず。すなわち「あえて、バストを小さく見せたい人などいるはずがない」→「実際に調査結果でも1割しかいない」→「その程度のニーズに応えて製品化しても、採算ラインには乗らない」。
しかし、ワコールで、この製品開発に関わった担当者は、まったく違う考え方をしたのだろう。すなわち「調査で1割もの人が、バストを小さく見せたいと思っているのなら、その背景には、もっと多くのニーズがあるかもしれない」と推測したのではないか。
えらいのは、そうした発想に基づく製品企画を通すワコールの社風だと思う。
ユニセックスからの転換
ともかく「小さく見せるブラ」はヒットした。これを受けてネット限定通販ではない商品『CuCute(キュキュート)』も発売された。ワコールとしては、通販での売れ行きにかなりな手応えを掴んだからこその展開だと思う。
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