中国ビジネス10のミスマッチ(2/10)

2007.10.08

経営・マネジメント

中国ビジネス10のミスマッチ(2/10)

坂口 昌章

皆さんは中国の富裕層をどのようなイメージで捉えているだろうか?少なくともファッションの分野では、日本の中流向け製品は中国富裕層には馴染まないだろう。異質なマーケットなのだ。

2.リーズナブルとラグジュアリー

 日本のビジネスの基本は、「良い商品をより安く」販売することだ。これは世界で初めて大衆社会を実現した江戸後期から一貫した伝統である。財閥企業の創業者の家訓は、江戸時代から現在まで継承され、戦後の一億総中流社会にも機能してきた。大衆に支持されることこそ商売の要であり、そのためには、薄利多売を追求すべきだという強い理念を持つ経営者も多い。
 中国の改革開放政策は、日本人の歴史的な商理念の実現に貢献した。中国の低廉な人件費を利用することで、大衆に支持される薄利多売の商品が生産できるようになったのだから。この10年間、日本の製造業は「いかに安く作り安く売るか」を追求していた。製品価格は下落し、ディスカウント商法が流行し、国内市場は中国製品であふれかえった。
 一方、この10年間の中国は経済成長をなし遂げ、富裕層を中心にした豊かな国内市場が出現した。また、品質管理、コスト管理の厳しい日本向け輸出に対応した輸出メーカーは、世界中の市場に輸出できるだけの技術力・企業力を身につけた。最早、中国企業は日本輸出に依存することはない。欧米向け輸出と国内市場向けの生産に転換し、更に高い利益を確保することができるようになったのだ。
 中国国内アパレルは、この10年間で激しい競争と淘汰を経験した。一部のアパレルは差別化のために、徹底したラグジュアリー戦略を展開した。イタリア素材を使用し、徹底したプロモーション戦略により、ブランドの知名度を高めた。北京の婦人アパレル企業「ホワイトカラー」は、売上の5%をプロモーションに使っている。VIP向けに「ホワイトカラー」という自社オリジナルのファッション雑誌を隔月で発行し、ダイレクトに顧客に届け、フロアショーなどのイベントを頻繁に開催している。ホワイトカラーの製品価格は、夏物の最低価格でも1300元。10万元、20万元の製品も珍しくはなく、最高では100万元のオーダーメイドの製品もある。
 「ホワイトカラー」は、競合ブランドとして、ルイ・ビュトン、グック、アルマーニ・コレクション、マックス・マーラ等を設定している。実際に、彼らが展開しているフロアでは、こうした世界のラグジュアリーブランドと競い合っているのだ。

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