適性検査は、有効に使いたいけど使いこなせない(又は使う気はないけど実施している)人事と、大して意味もないのに受けさせられている学生という構図で、結構不幸な状態なのだと思わざるを得ません。
SPIに代表される適性検査は、特に新卒採用では定番になっています。算数や数学のような問題と、国語のような問題で能力的な側面を判定するもの、様々な言葉や短文に対する反応・感じ方を選ばせて、性格、情緒、意欲、行動特性などを診断するものなどがあって、これを通してその会社や職務に対する適性を見極めようというのがもともとの趣旨であります。が、実際の採用場面での適性検査の使われ方を見ると、その趣旨には程遠く、何のために実施しているのか、その位置づけにはやや首をかしげたくなります。もちろん、私も昔やっていたので、その無目的さを振り返って反省した上で・・・。
「実際には学校名や男女といった属性で選考しているが、そうは言えないので適性検査の結果を落とす理由にしている。」「昔から役員面接の必須資料となっていて、(使わないのだけれども)添付しなければならないから。」「何を判断するために使うという目的は特にないが、面接だけで決めるのは何となく不安だから。」「(学力の最低ラインを決めている、情緒的側面のこの部分は重視しているなど)結果のごく一部だけを、選考の材料にしている。」といった会社が圧倒的で、適性検査でアウトプットされる情報を読みこなし、面接とリンクさせながら採用に効果的に使えている会社は、ほんの一握りです。「能力検査の問題は、できるだけ難しい方がいい。理由は、難しいと皆『落ちたかも』と思うから結果が連絡しやすい。」という声だってあります。
これらは、受けさせられる学生さんから見ると、適性検査にかかる時間も相当なものなので、とんでもない話なのですが、一方的に企業側を責める訳にもいきません。適性検査というのはどんな会社にでも使えるように網羅的に作られている訳ですが(そうじゃないと儲かりませんので)、大事にしたいポイントや必要とされる能力やタイプ、採用基準や人物像は会社によって異なるので、適性検査でアウトプットされる情報が全て貴重であるということは有り得ません。また、心理学・統計学の専門家の知恵の結集であることは素晴らしいのですが、それ故か普通の人には表現が難しく、日常的に人を表す言葉とは異なり、面接での質問に応用できる感じがしません。さらに、その情報量の多さは人事担当者が一人ひとりの適性検査の結果をしっかり読もうという気をなくさせる、というより、その気があっても時間的に無理があるのが実際なのです。
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2011.01.07
2011.04.14
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。