買収した会社を一定の条件を充たしたうえで合併することにより節税を図ることが可能となります。一方でマネジメント上の観点から考えると、買収直後に合併することは必ずしも良いこととはいえません。
M&Aを行うことによって税負担を軽減する手段の一つとして、繰越欠損金の引継ぎを活用する方法があります。その方法は、繰越欠損金を持っている会社を買収して、その会社の繰越欠損金を引き継ぎ、この繰越欠損金とM&A後に生じた所得を相殺して節税を図るものです。
M&A後に所得が生ずる会社が、買収の対象となった会社であれば繰越欠損金を使用するのに問題はないのですが、これに合併を絡めた場合には、繰越欠損金の引き継ぎに対して一定の制限が設けられています。この制限は、節税そのものを目的としたM&Aに制限を設けるために行われるものです。
繰越欠損金をためこんだ状況で売却に応じる会社というのは、経営状況が非常に厳しい会社と考えて間違いなく、その会社からすぐに所得を出せるような状況に再生させることは困難です。そのため、買収を行った会社自身や黒字の子会社等との合併を行ったうえでの再生を目指すことがよく行われるのです。
そこで問題となるのが、いつ、どのように合併を行うのかです。
これには繰越欠損金の使用制限への対応の観点とマネジメント上の観点の二つの大きな観点からの検討が必要になります。
一つ目の繰越欠損金の使用制限への対応の観点は、組織再編税制とよばれる税法への対応であり、引き継ぐ事業と合併を行う会社の事業とが相互に関連していることや売上高、従業員数、資本金の金額などの規模の割合がおおむね五倍を超えない場合、従業員を八割以上引き継ぐ場合などの一定の条件を充たした場合に認められています。
この税制は過度な節税を防止する観点から一定の制限が設けられているものであり、これに関連してヤフーの子会社合併に対して国税が否認を行ったことは記憶に新しいところです。
http://ir.yahoo.co.jp/jp/release/index2010.html
国税不服審判所への審査請求も行われている事案であり、この結果については要注目です。
一方でもう一つの観点も同じくあるいはそれ以上に大切な観点です。節税の観点から考えれば、所得の生じている会社とすぐにでも合併したほうが有利です(否認される可能性は無視するとして)。しかしマネジメント上の観点からは、繰越欠損金を抱えて売却された会社をすぐに合併して取り込むことについては、以下のような問題が発生するケースを散見します。
①通常、管理部門の統合などを伴うことから、合併会社と合併される会社との間に共通費が発生することになり、その配賦額をめぐって混乱するケース(赤字が発生するのは配賦額が多すぎるからだとする言い訳を行う余地を与える)
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