新日本製鉄と住友金属工業とが合併検討を発表した。華々しく見える合併やM&Aだが、言われているほど規模の拡大で経営は安定し、調達・購買コストは下がるのだろうか?今回は、この両社の合併をケースに、M&Aのメリットやその一つとして喧伝されている規模の拡大による調達・購買コストの低減について考えよう。
2月4日(金)に新日本製鉄と住友金属工業とが合併検討を発表した。今後、公正取引委員会など国内外の独禁当局の認可を得なければならず、紆余曲折があるだろうが、合併が成立すれば、アルセロール・ミタルに次いで世界2位の粗鋼生産量を誇る鉄鋼会社が成立することとなる。
華々しく見える合併やM&Aだが、言われているほど規模の拡大で経営は安定し、調達・購買コストは下がるのだろうか?今回は、この両社の合併をケースに、M&Aのメリットやその一つとして喧伝されている規模の拡大による調達・購買コストの低減について考えよう。
この両社の合併、戦略的に見れば正しいものであろう。鉄鋼の主原料の鉄鋼石、石炭においては、現在、ヴァーレやリオ・ティトン、BHPビリトンなどの資源メジャーの寡占状態にある。
これらの資源メジャーに対して、鉄鋼メーカ各社の価格交渉力は落ちてきている。例えば、鉄鉱石では、ヴァーレやリオ・ティトン、BHPビリトンの3社で世界シェアの7割を占めるが、粗鋼生産シェア世界一のアルセロール・ミタルで世界シェアの6%、新日鉄は2.2%、新日鉄と住友金属を単純に合算しても3.1%に過ぎない。11年1~3月期の原料炭の価格は02年度の4.7倍、鉄鋼石は8.9倍となっている。
合併やM&Aの効果としてよく上がるのが市場支配力の獲得だ。市場支配力の獲得とは、企業規模を大きくする事で購買力や供給力を増し、市場をコントロールしたり、取引交渉を優位に進める力を得ることだ。新日鉄と住友金属の合併も、この市場支配力の獲得により、原料市場での存在感を増す資源メジャーへの対抗が目的の一つであるだろう。
営業面でも、規模や市場での存在感は意味を持つ。BtoBでもBtoCでも、買い手はその購買プロセスにおいて、候補となるサプライヤを比較しながら、最終的な購入先を決めていく。反対に言えば、この購買プロセスに乗っていなければ、買い手から選ばれることは決してない。サプライヤの選定の時間や探索コストに限りがある中で、買い手はあらゆるサプライヤを比較検討することはない。予め、何らかの基準を持って、購買プロセスに乗せるサプライヤを絞り込む。時間やコストに制約がつきもののBtoBの取引では、この傾向は更に強くなる。
調達・購買において、購買方針等により三社以上からの見積もり取得をルール化している企業は多くあるが、このような企業では、熱心な調達・購買担当者が任についていない限り、ルールに定められた最低限の社数、この例であれば三社のサプライヤしか購買プロセスに乗らない。購買方針が二社以上となっていれば二社だけだ。なぜなら、比較検討には手間が掛かるので、調達・購買の意義を理解していない担当者であれば、できる限り、検討対象となるサプライヤの数を少なくしたいからだ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます