今回は、社内にある人事制度が「一社一制度」であることが果たして、その会社にあった人事制度なのか?「運用しやすい人事制度」ではなく、「戦略に沿った人事制度」を作ることについてお話します。
【社内に何種類かの制度があるとまずいか】
ほとんどの会社が、全社一律の人事制度を運用していますね。
これは全社的な運用の都合を考えれば当然のことではあります。
社内にいくつもの人事制度が混在していると管理はしにくいのは当然です。
・人事異動を想定すると、統一のものでないと困る。一人の社員の評価の連続性を確保できなくなる。
・部門によってバラバラでは、人事部が制度全体の維持管理に責任が持てない。
・評価者自身も異動することを考えると、行く先々で内容を理解するのが大変。
・被評価者の立場でも、異動するたび違う人事制度を新たに理解しなくてはならず、混乱が生じる。
というような理由だと思われます。
そこまで積極的に理由を考えているわけではないにしても、極端に言いますと「人事制度とはそういうものだ」という刷り込みの中で自然にそうしてしまっている場合のほうが多いのではないかと思います。
さて、上記の4つの「人事制度を一社一制度にしている理由」のうち、最後の「被評価者にとって」の問題点は、他の理由に比べると実はあまり問題は大きくありません。
異動する本人は、事業内容や仕事内容も変わり、心機一転のスタートという気持ちになっています。異動した部署で新たな仕事内容と共に、人事制度を再度理解する必要が生じたとしても、最初から仕組みとしてそうなっていたとすれば、漠然と持っているイメージに比して、それほど大きな違和感を抱くことにはなりません。
それがその部署の事業や仕事内容にマッチしていれば、無理矢理全社統一の人事制度に押し込められるよりも、むしろ本人にとっては歓迎すべきことでもあるのです。
特に評価項目については、部署の特性と仕事内容の違いをよく吟味して、ありきたりの用語で全社一律のものでお茶を濁すようなことがないようにしなければなりません。
全社統一で一社一制度でないと困るのは、他の誰でもない、人事制度を管掌する人事部であり、会社だということではないでしょうか。
経営戦略上、会社として、得意な一事業に特化して生き残りやり続けるということが難しくなってきました。IT技術の革新やまた同じ事業を同じ手法でつづけることも難しい時代になっています。「多角化」というような積極的な意味ではなく、生き残りをかけて柔軟に、しかもスピーディーに形を変えていかなくてはならない事情もあるわけです。
ある専門分野の出版社の実例です。
歴史ある雑誌を発行しておられるこの会社は、ジワジワと売上が落ち込んでいく状況を打破するために、モバイルでの情報発信、出版物のコンテンツを加工しての携帯コンテンツ市場への参入などを積極的に進めていきました。
人材もその分野にシフトを進めていきます。
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人事制度について
2011.01.18
2011.01.07
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2010.12.15
2010.12.08
今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。