Z会といえば大学受験のための通信教育の老舗。東大・京大合格者のうち、実に毎年そのほぼ半数がZ会出身者と、日本のトップ大学に関して驚異的な合格者占有率を誇る。圧倒的な実績を持つ通信添削システムは一体、どのようにして開発されたのだろうか。そしてなぜ、長年にわたって東大合格者の約半数もがZ会ユーザーなのだろう。同社四代目社長・加藤文夫様にZ会の秘密を教えていただいた。『インタビュー&構成 by竹林篤実』
第二回「限られたお客様に最高のサービスを」
■40年前の差別化と集中
創業者・藤井豊氏が自らの肉体的ハンディをカバーするために編み出した通信添削は地道に、しかし順調に成果を上げた。実はZ会には藤井氏のほかにもう一人創業者がいた。共同創業者は教育ビジネスとして添削に可能性を見出し事業拡大に走ろうとしたため、藤井氏とは意見が合わなくなり袂を分かつことになる。
「共同創業者は後ほど添削を事業化し、それだけでは飽き足らず、より効率的な教育事業として問題集などの出版事業へと手を広げていきました。ところが藤井は、そんなことにはまったく無頓着だったようです」。
ビジネスとしての規模こそ小さいもののきちんと実績を出し、顧客からは確実に支持される。戦前のZ会はそんな事業を展開していたが、環境が急変する。戦争である。
「昭和19年の東京大空襲で焼け出されてしまい、中伊豆に疎開してきたんですね。もともと藤井には事業欲があったわけではないので、疎開後は半農半読、まさに晴耕雨読を地で行く暮らしぶりだったようです」。
やがて戦争が終わり、日本は復興へと向けて動きだす。国づくりは人づくりから。教育に力が注がれ、東京大学をトップとする難関大学合格に向けて熾烈な競争が繰り広げられるようになった。合格に向けてがんばる子どもたちを応援したい。そんな思いが再び藤井氏の心の中でふくらんでいった。やがて一時の隠居生活で十分にリフレッシュもした藤井氏は、今度は東大合格をめざす子どもたちのための通信添削事業を再開する。
ただし本拠地は以前の東京・新宿ではなく中伊豆に置いた。郵便局さえあれば場所を選ばないのが通信教育のメリットである。それならば地価をはじめ諸経費が高くつく東京をあえて本拠地とする必要はない。
「お客様からいただいたお金は問題や添削の質を高めることで可能な限りお客様に還元したい。これが我々の基本的な考え方ですね」と加藤社長は話す。
「顧客還元の考え方はZ会にずっと受け継がれてきました。だから我々は意図的にマーケットを絞り込んだのです。三代目社長が常々言っていたのが差別化と集中でした」。
今でこそ差別化、選択と集中といえば経営の基本的なセオリーとなっているが、すでに40年前にそれをスローガンとし実践までしていた企業はほとんどなかったのではないだろうか。Z会の先進性をうかがわせるエピソードである。
■お客様還元主義
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FMO第1弾【株式会社Z会】
2007.10.31
2007.10.24
2007.10.17
2007.10.10