広告宣伝とPRの違い

広告宣伝とPRの違いを理解している人は少ないようである。さらに、その違いを上手く使い分けられる人はさらに少ない。これらの違いを理解して適切に活用したいところである。

 マーケティングにおけるプロモーション(訴求方法)として、広告、人的販売、PR・パブリシティなどいくつかの方法がある。広告宣伝とPRは似て非なるマーケティングの手段である。この違いが分かっている人はマーケティングの専門家でもない限り少ないようである。また、その違いを使い分けることのできる人はさらに少ない。何が違うかと言えば、その目的が違う。広告の目的は、視聴者に具体的な行動を起こさせることである。多くの場合、特定の製品やサービスの購買を勧めることになる。一方で、PRの目的は、ものごとの説明である。必ずしも特定の商品を買うなどの行動を促すものではない。

 相手の関心をひくようなキャッチコピー、表現方法、表現手段、表現形態、言葉遣い、タイミング、間などを計画したり、あるいは、無意識に実行するためにはセンスや経験がいるようである。誰にでも簡単にできるようなものではない。一方で、PRは表面的には簡単である。あるモノゴトについて知っていることや思いついたことを思いついた順番に並べ立てれば説明したことになる。しかし、もう少し踏み込んで考えれば、PRの目的である説明とは、情報の発信だけではなく、相手に適切に受信されることも含むことになる。相手に説明が理解されなければ意味がない。この次元になるとPRは広告と同様に難しい職務となる。広告では視聴者に対して伝える内容の本質をとらえること、PRでは視聴者に対して情報を適切に構成することが求められる。さらにそれらを効率的・効果的に伝える必要がある。両者に求められるものは明らかに異なる。

 東国原知事の就任後1週間の宣伝効果が数百億円だと試算されていたことがあった。東国原知事はPRが上手い。宮崎の宣伝を上手くPRに変えている。「宮崎県に来て欲しい」、「地鶏などの名産品を買って欲しい」という宣伝を「お笑い」という自己表現に変えている、あるいは、多くの人々が関心を持つご自身の仕事の説明の一部にしているようである。

 東国原知事が「宮崎、宮崎、宮崎」と言うのは、その表現の巧みさもあって受け入れられることが多いだろう。しかし、例えば、私が企画・運営するビジネススクールについて「池袋ビジネススクール、池袋ビジネススクール、池袋ビジネススクール」と連呼する場合はなかなか受け入れない。メッセージが受け入れられるためには、受け入れる側に準備がなければならない。相手に特定のモノゴトについての理解やイメージがなければならない。多くの人が宮崎県が九州にあることを知っていることだろう。また、温暖な土地であるなどのイメージを持っていることだろう。これに対して「池袋ビジネススクール」という小企業の活動を知る人は少ない。それがどんなに価値があっても、社会的に役立つとしても知ってもらえなければ価値がないに等しい。池袋ビジネススクールという言葉に良いイメージを持って頂くには、まだまだ説明不足であり、不透明さやそこからくる受け手の不安の方が多いのかも知れない。そんな状態では視聴者に名前を聞き取って頂くことさえ難しくなる(実際、聞き取るには長い名前である)。また、記憶にも残り難いし、注意も払われ難くなる。

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