小学校英語活動のプログラムを自治体なに提供し、指導研修も実施してきた浅井です。現実に小学校英語活動が始まった状況を振返ってみました。
今年の春から「小学校英語活動」がスタートした。開始前には相当な期待(好評価も批判も含め)があったが、実際に全国の小学校でスタートすると、全くと言って良いほどに話題にならなくなった。
その理由を考えると、英語教育に対する文部科学省と現場意識のずれを感ぜざるを得ない。「小学校英語活動」はその名の通り、国・算・理・社のような「教科」ではなく、「特別活動」という位置づけにある。現在指導現場では、週に1時限(45分)だけの「特別活動」に力を投入する以上に新指導要領で増加した算数や理科の授業に力を入れなければいけないからだろうと推測できる。
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小学校英語活動の目的は「音声中心で英語に慣れ親しませる」、「言語や文化について体験的に理解を深める」、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する」という3点から「コミュニケーションの素地」を養うことにある。その素地が身についていることを前提に、来年度から中学校の英語学習内容が大幅に難化する。
しかし、現状では小学校での素地づくりは期待できず、今まで通り中学からの教科学習で力をつけるしかないということになってしまうということになりかねない。英語コミュニケーション力の素地を作るという目的は達成されないばかりか、中学での負担が増加する可能性が否めない。
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確かに小学校英語活動の時間に外国人の講師が毎回来るのであれば、英語に触れる目的や文化理解という目的は達成されるかもしれないし、外国人と物怖じせずに話しをしてみるという目的も達成させるかもしれない。しかし、技能の積み重ねもなく、試験で結果を示されない状況では2年間の学習成果は「Hello. How are you? こんにちは?」だけで終わってしまう恐れの方が多い。
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語学学習はスポーツと同様に基礎体力を養成するところから始まる。楽しさはそのトレーニングの達成感からくるものだ。このトレーニングの第一ステップを小学校に求めているのだ。このステップとは「英語音を身につけること」であり、「日常生活語彙・表現と基本文法(文の構造)を身につけること」である。最初の2年間で徹底した基礎訓練を行うことで、初めて楽しい英語授業が展開できるのである。
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単に外国人との時間や、うろ覚えの英文を利用した会話ゲームで過ごす2年間では、英語のできる日本人は生まれるはずはない。
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2009.10.31