カジュアルウェア専門店のジーンズメイトが大きな戦略の転換を行おうとしている。
かつてはカジュアル、ジーンズ店の代名詞であった同社であるが、近年はユニクロやファストファッション勢に圧され11年度まで4年連続で最終赤字を計上するという低迷した業績であった。戦略転換によって、12年度は黒字転換をめざすと4月13日付の日経MJにはあるが、果たして切り札になるのだろうか。
同記事は「セルフ主体を転換 商品説明、丁寧に」とあり、写真のキャプションには「女性店員も積極活用して売り場の活性化につなげる」と記されている。
戦略=目的+実現手段である。ジーンズメイトの「接客販売への転換」は何を目的とした手段なのだろうか。
記事によれば、「経費を削減するため、配布するチラシを減らしており、特売効果による来店客増加は当面見込めない」ということから考えられた策であるようだ。つまり、目的は「チラシ削減による集客不足の補完」であり、そのための「接客強化」なのである。
記事にあるもう一つのキーワードが「買い上げ率向上」だ。
売上=来店客数×買い上げ率×客単価である。チラシ削減によって来店客数が減少したなら、来店客が買わずに帰るということは何としても避けねばならない。
買い上げ率だけではなく、購入する際は1点でも多く。また、少しでも高額なモノを買ってもらうという客単価向上も欠かせない。そのための接客販売強化なのである。
上記のように書くと「でも、接客販売って何かウザくないすか?」といわれそうだ。しかし、そこは戦略とターゲットの整合性が確保されて老いるかにかかってくる。
かつては若者のファッションを先導するポジションであったジーンズメイトも、近年ではすっかり競合にそのポジションとファッション感度の高い顧客を奪われてしまっている。現在の顧客層は「昔から行っているから」という習慣的来店客がほとんどではないか。年齢層でいえば、かつての若者、現在の30~40代以上だ。そこを狙って、記事にも今春には「服飾雑貨のプライベートブランド(PB)“ブルースタンダード”を発売した」とある。
ターゲットは年齢層だけでなく、心理属性も重要だ。この場合、あまりファッション感度が高くない、自分でコーディネートを考えるのは面倒だったり自信がなかったりするという点が重要だ。同社に若い頃から、悪い言葉でいえば惰性で通っていた中年層。行けばなんとなく安くて周りのみんなが来ているような服が置いてある。それを購入するというような購買行動を取っていた顧客だ。その顧客も年齢が進み、同時に世の中のファッションがカジュアル化していく中で「何を着たらいいんだ?」と悩みを抱えるようになる。そこを狙うのが今回の戦略のキモなのである。
「戦略」という言葉は安易に使われるが、そもそもの「目的」は何なのか。その実現のための裏付けとなる「手段」とt達成目標」は何なのか。それはどんな「ターゲット」に向けて展開されるのかを明確にしなくてはならない。
このジーンズメイトの新戦略、どのように効果を挙げていくのかに注目したい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。