調査対象者から、「アンケート調査票」を郵送で回収する場合、回答してくれた人に対して、後日、500円~1,000円程度の謝礼(「QUOカードなど)を郵送で送付することが一般的です。
私は以前、回答者に後日謝礼を送るのではなくて、アンケート調査票を送付する際にあらかじめ謝礼を同封しておくと、回収率がアップするということを知り、実際に試したことがあります。
結果は期待どおり、回収率が数パーセントアップしたことを覚えています。
ただ、謝礼を事前に同封するのは、調査対象者全員に謝礼を渡すことであり、
「ベタ付け」
となるため、総コストが高くなってしまいます。
もちろん、そのおかげで回収率が向上すれば
「費用対効果」
という視点ではOKなのですが。
とはいえ、ベタ付け事前謝礼はコスト的な問題と、そもそも回答してくれない人にまで謝礼をあげることについて感じる
「バカバカしさ(無意味さ)」
といった心理的抵抗もあり、なかなか実行することはできないものです。
しかし、もっと手軽に、簡単に回収率をアップする方法もあります。
これは、心理学の実験として行なわれたものです。
調査対象者に対し、アンケート調査を郵送で送付する際、
「調査協力依頼状」(印刷されたもの)
を以下のABCの3パターン作成し、
どのパターンが最も回収率が高いかを検証したのです。
--------------------
A なにも手を加えない調査協力依頼状
B 手書きの短いメッセージ(「協力お願いします」
といったもの)を依頼状の空白部分に記入したもの
C ポストイット(付箋紙)に手書きのメッセージを
書いて、協力依頼状に貼り付けたもの
---------------------
その結果は、
C>B>A
となりました。
すなわち、手書きメッセージの付箋紙が貼られた依頼状の送付者が、最もアンケートの回収率が高く、次に手書きのメッセージが追記されたものが高かったのです!
この結果は、「説得」に用いられる様々テクニックを解説した『影響力の武器』で示された
「返報性の原理」
で説明することができます。
「返報性の原理」とは、端的に言えば、
「自分が受けた借り(恩)は、返したくなってしまう」
という、私たちがほぼ共通して持っている
「心理傾向」
のことです。
上記のアンケート実験について言えば、
・わざわざ「付箋紙」を貼ってくれたこと
・わざわざ「手書きのメッセージ」を追記してくれたこと
が、調査対象者の感じる「借り」です。
もちろん、調査対象者は調査協力を依頼される側であり、手書きだろうが、付箋紙だろうが、「借り」と感じるほどのこともないのですが、それでも、
「私のために手間をかけてくれたんだな」
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2012.08.01
2012.08.13
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。