「丸亀製麺」の合理性が“常識破り”と捉えられる不可解

2013.04.29

経営・マネジメント

「丸亀製麺」の合理性が“常識破り”と捉えられる不可解

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

急成長中のうどんチェーンを採り上げた番組は、その秘密を“常識破りの非効率経営にあり”とした。しかし同社は合理的であり、その合理性の範囲で十分効率的である。それを“常識破り”というなら、世間一般の“常識”のほうが間違っている。

4月25日(木)放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)は「急成長の秘密は“常識破り経営”にあり!」と題して、讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」を採り上げていた。

同チェーンの運営会社・トリドール全体での年間出店数は約120店舗(3日に1店!)という怒涛の攻勢。もちろんその多くは「丸亀製麺」だろう。売上はこの5年で3倍に成長。2012年度は売上高730億円、80億円の過去最高益を達成する見込みだという絶好調企業だ。

「丸亀製麺」は釜あげうどん一杯280円、サイドメニューなどと組み合わせても500円以下の“ワンコイン”の安さ、そしてコシのしっかりした麺が人気で、急成長している。

この番組ではその秘密を「非常識な非効率経営にあり」と謳っていたが、小生に言わせれば全くの誤解。同社は非常に合理的であり、その合理性の範囲で十分効率的なのだと思う。

番組の指摘する「非効率」は、飲食チェーンの“常識”、セントラル・キッチン方式でないこと。

全ての店舗に製麺機が置かれ、各店で粉から麺を毎朝作っている。ダシも店内で昆布やカツオブシなどを使ってイチからとる。サイドメニューの天ぷらやかき揚げも、生野菜を切るところから始まる。おにぎりも機械ではなく店員が手で握る。だから丸亀では開店1時間半前には、仕込みが始まる。その分、店員も多い。

しかし粟田社長が説明したように、店でやるからこそ美味しさを実現でき、演出すらできる。

うどんをセントラル・キッチン方式で製麺したらどうなるか。寝かせなければいけない時間帯に輸送することになり、温度・湿度管理は狂い、「丸亀製麺」のウリである麺の出来にばらつきが生じかねない。

ダシも作りたてで提供するからこそ、香りと品質を担保できる。生野菜をセントラル・キッチンで切って各店に配送したりしては乾燥してしまう。ましてや天ぷらやかき揚げを揚げるのを店でやらなければ、ベチョベチョに湿気てしまう。

セントラル・キッチン方式でなくとも同チェーンは十分効率的だ。

なんといっても大量の店舗展開と人気のお陰で、食材などの仕入れは圧倒的に割安にできる。店舗設計も標準化し、建材や設備の調達も割安なはず。

メニュー自体は極端に少なくはないが、うどんとトッピングの組み合わせに過ぎず、それにサイドメニューを加えるという構成は変わらないので、オペレーションは実にシンプルだ。しかもセルフ方式なので、配膳や片付けに人手はほとんど要らない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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